夏の尾

 
 夕方の用事が午前中からに前倒しとなって山に出られず、そんな日に限って快晴で気温も高い。
 翌日からは4~5℃も急に涼しくなって25℃ほどに  という予報を見ているので悔しいのである。
 
 台風によるフェーン現象の影響で一時的に暑くなる事などは9月以降にもあるだろうけど、それはただ秋の暑い日というだけの話。
 クワガタの季節 というものの本体とつながった 「 夏の日 」 となると、もう後にはなさそう。
 二次発生のノコギリ・ミヤマに大型個体が出ているとすれば、それらを見逃して平地のシーズン終了か…
 などと考えていたところ、考えていたよりも早く用が済んでしまった。
 
 ひたすら歯噛みして悔しがったのでやや疲れていたが、こうなれば夏の尻尾をつかみに山へ行くしかない。
 
 
 
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 例年8月の終わりともなるとカブトムシの数は減り、勢いを盛り返したクワガタムシが樹液に増えるものだが、山に入って木々を見て回ると今年はまだまだカブトムシだらけという木が多い。
 
 二次発生狙いの目論見がはずれたか と、気分を少し鎮めながらポイントを奥へ。
 
 
 
 
 
 
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 この時期の樹液にはクロカナブンが増える。
 シロスジカミキリの産卵痕からにじむ樹液に、クロカナブンが頭を突っ込んで斜めに刺さっている木が多い。
 
 木の風下に立つとクロカナブンの匂いがした。
 嫌な臭いではなく、独特の甘い香り。
 
 
 

 
 
 
 クロカナブンに混じり、例年なら発生が終わりかけているはずのナミカナブンやアオカナブンシロテンハナムグリ、ムラサキツヤハナムグリの数もまだ多い。
 
 つくづく今年の虫の出方は変わっていると思う。
 
 
 
 
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 林の端が近くなると、急にクワガタの比率が大きくなった。
 クワガタが少ないのではなく、木々一本ごとのカブトムシとの別居が盛夏よりも進んでいるようだ。
 
 この時は幹の裂け目に入り込んでいる大型甲虫が多く、カブトムシやミヤマクワガタクロカナブンといった面々の脚や尻の先が穴から出ているのを見た。
 このノコギリクワガタも背中が乾いた樹液で汚れているので、やはり近くの穴に入っていたのだろう。
 
 幹から出る樹液の量が減る時期なので、裂け目に直接入り込みたがるのかもしれない。
 
 
 
 
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 ノコギリクワガタは数が多く、また盛夏に増して大きなものが増えていた。
 
 画像はその時見たもののうち大きな個体で、65~67.5mm。
 二次発生の新しい個体と、アゴ先端や内歯が欠けていたり、鞘翅に傷がついたものが混じっている。
 
 
 大きなノコギリクワガタが多いのは嬉しいが、同じように二次発生で増えていて良いはずのミヤマクワガタの姿が少ない。
 
 自己ギネスのミヤマは07年の8月21日に採れたもので、今年くらい発生が長引けば同じように大きな個体が出ていてもおかしくない、いや絶対いるはず… などと考えていたのだが。
 
 
 
 
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 この木も大きなノコギリクワガタが複数ついているのが見えて近づいたのだが、各個体の位置を確認しながら裏に回り込むと、高い位置のオーバーハングとツタの間にミヤマクワガタの姿。
 今シーズン大形個体を見慣れた目にも明らかに大きい。
 
 先日の個体を見た時も大きいと思ったが、それよりずっと高い位置についたこの個体がさらに強い存在感を放っている。
 少し姿勢が変わって横顔が見えた時に確認できた胴体とアゴの厚みが、遠目にも普通ではなかった。
 
 
 今夏の尻尾が目の前にぶら下がっている事を確信しつつ、どうにも手の出し辛いポジションと下草の深さに不安を覚え、木を見上げながらしばらく棒立ちになった。
 
 
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                             2013年 8月28日  宮城県