俺たち全天候型


 雨だから虫なんかいないだろう
 と思えれば、それを自分への言い訳として雨の日はめでたくお休み出来る。
 
 雨の日でもクワガタがいる という実態とその場所を知ってしまうと、どうあろうとも行かなければならなくなるから厄介だ。
 知らない方が良い事もある。
 
 
 ここ五日間ほど雨続きだったが、やはり知ってしまった人たちは山が気になってしまう。
 
 まず藤次郎さんと、次に身内の子供たちと、それからishiさんと… 都合三度あちこちの山を見て来た。
 
 
 
 
 
 
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 まずは雨天の一日目。
 
 「 ちょっとでもあいたら行かないと! 」
 と藤次郎さんが時間をあけて誘ってくれたのは、以前から通っているミヤマクワガタのポイント。
 
 「 暗いし、降ってるしなあ 」
 とか、一応言うだけは言いながら車を降りると、もうすぐそばの木に一頭目の個体が付いているのを藤次郎さんが発見。
 
 雨よけのつもりか、細枝にぶらさがるように静止していたが水滴だらけ。
 こうやって眺めると、確かに保護色が効いていると思う。
 
 
 
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 「 なんだこれ… 」
 という藤次郎さんの呟きに振り向くと、このペア。
 
 後でサイズを測って見たところ、43.5mmの大きな♀に38mmの小♂。
 ノミの夫婦とは言うが、ミヤマのペアでこうした極端な組み合わせを見たのは初めてだと思う。
 
 
 
 
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 そうそう、これが本来の組み合わせ。
 堂々たる王冠の幅。
 二人で遠くから 「 アタマでけえなあ!」 と賞賛。
 
 
 人の目にはどの木も大体同じように見えるのだけれど、例によって美味い木には人気(?)があるようで、次々とクワガタが飛んできたり登って来たり。
 
 
 
 
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 右上から幹を降りて来た♂が♀にちょっかいを出そうとしたが、ペアの♂が素早く迎撃。
 後から来た♂は慌てて左上の細枝へ逃れる。
 少しでも力量差があると、咬みあいの喧嘩にはなかなか至らないようだ。
 
 美味い木を眺めていると、こうした攻防が見られて面白い。
 
 
 この個体が一番大きいだろう と思いつつ戻る道。
 藤次郎さんが林の奥へ少し入り、往路でノーマークだった木を見上げ
 「 ちょっと来て、 この木の下見といて… 」
 と言う。
 
 どうも何かありそうだと思いつつ近寄ると、藤次郎さんが揺らした樹上から足元へ    ドサッ ! と大きな塊。
 
 
 
 
 
 
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 画像右側に見えている大きな個体が最後に藤次郎さんの落としたもの。
 その日の大きめと小さめ という感じで最後に写真を撮ろうとピックアップしたケースの中で、目立って大きい。
 
 「 こいつがもう下から見えてたんだよねえ… 」
 と藤次郎さん。
 この人が確信めいた雰囲気で何か言う時は、既に大物を視界に捕らえているのである。
 
 
 
 
 
 
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 首を曲げたり手を引っかいたりと頑なに計測を拒否するものの、とりあえず69mm後半は保証して良いだろう。
 きっちり姿勢を決めて少し伸びるか、あるいは乾燥して微妙に縮むか。
 
 このポイントの大型個体というと以前は第一内歯の長いものが多かったが、昨年の70mmも今回の個体もエゾ型。
 またミヤマクワガタしか採れなかった所に大きなノコギリクワガタも混じり始めているので、少しずつ傾向が変わって来ているのかもしれない。
 
 
 藤次郎さんと二人
 「 やっぱり雨でもいるなあ 」
 と呟く。
 【 雨だから 】 という言い訳は過去のもの。
 
 
 『 全天候型バカ 』 というフレーズが頭をよぎる。
 
 あきらめて いる。
 
 
 
 
                               2013年 7月  宮城県