飲む毒 目の毒

 
 9月に入り、幾らか涼しくなった。
 それで高標高地のクワガタにも探りを入れているが、今期のヒメオオなどはスタートが遅いようで、半日くらいポイントを見て廻っても二桁まで見られない事が多い。
 
 そこそこ大きな個体も出てはいるし、発生の中心がズレている感じもないけれど、木についているヒメオオの挙動がやたら忙しないのが気になる。
 目に付く個体の多くが幹と小枝を行ったり来たりしており、樹皮の齧り口にどっしりと構えて吸汁している普段の様子とは明らかに違う。
 
 まだ暑いため、発生はしているものの本格活動に入れないで徘徊している個体が多いのではないだろうか。
 私自身も、盛夏ほどの暑さではないと油断してタンクトップで歩いていたら、両肩が火傷寸前程度の日焼けをして痛い。
 
 ヒメオオは週末以降から改めて発生状況を探るとして、今回も何か虫以外のものを。
 
 
 
 
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 晩夏に見付けた新しいポイントを歩きやすくしようと鉈を振るっていたら、細いヤナギの根元で何か動いた。
 
 よく見ると斑の紐がくねっている。
 銭型模様のヘビと言えば
 
 
 
 
 
 
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 ご存知マムシ
 
 近付くと頭を上げて振り向き、ペロペロと舌を出し入れし始めた。
 
 
 
 
 
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 上のマムシと同じ場所にいたもの。
 ここにはカブトムシやクワガタと同時にアマガエルやアオガエルも多く、それを狙ってヘビもたくさんやって来るようだ。
 
 ヘビには手足が無いので平らな所を這うだけと思われるかもしれないが、腹板の摩擦を利用して器用に樹上へ登るのをたまに見る。
 
 
 クワガタを落とそうと木を蹴ると、バサリドタンとシマヘビやアオダイショウ、ヤマカガシなどが落ちてくる事があるが、マムシが落下する事は珍しい。
 普段は他の種類に較べて地表にいる事が多く、雨の後などには地表で濡れるのを嫌って樹上に登る という事なのかもしれないがどうだろう。
 爬虫類に詳しい方に会ったら尋ねてみたいと思う。
 
 
 
 
 
 
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 古くはトンボやチョウ、クモなどに加え、ナメクジやヘビなどを含めて 「虫」 = 「蟲」 とされていて、このうちヘビは特にナガムシと呼ばれていた。
 今回は虫以外で と言ったが、結局虫から離れていない。
 
 マムシは今だと漢字で蝮と書くが、元は 「真蟲」 。
 咬まれた者を死にいたらしむ毒を持つ、最も強力な蟲 の意。
 あまり甘く見て近寄ってはいけないと思うが、自分が通う場所の生物なので、こうしてくたびれてギュッと丸まってしまうまで撮影に付き合わせてしまった。
 
 毒を持つ危険な生き物には特有の魅力があり、それで写真に撮る人は野外でギリギリまで寄って撮りたくなるし、最近では女性でも好んで毒虫を飼う人があるようだ。
 どこかで危険を征する喜びを感じているのかもしれない。
 
 スズメバチマムシを捕まえて丸ごと焼酎漬けにするのも、根源的には同じような心理からではないかと思う。
 
 
 
 
 
                                                  2012年 8月  宮城県