羽根を伸ばす日

 
 
 博物誌の表題を掲げながら、ここしばらくは 「仙台甲虫血風録」 の様相を呈している本誌。
 クワガタと追いつ追われつ樹液に溺れるのは毎夏の事ながら、晩夏に気候が落ち着くと共に題材も散らしていこうかと考えている。
 
 
 
 
 
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 芋虫は 「イモムシ」 という種類の虫 という訳ではなく、大概は何かの、多くはチョウやガの幼虫。
 
 アゲハの類の幼虫に食草を与えて養うと、帯糸を掛けて蛹になる。
 しばらくすると色が黒っぽくなるが、これは死んでいるのではなく羽化の兆候。
 
 
 
 
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 羽化は普通暗いうちに始まる。
 朝の三時から四時くらいに、こうやって蛹殻を開いて出てくる事が多い。
 
 静かにしていると、殻を破る 「パリッ」 という音が聞こえる。
 これは頭と脚が覗いた所。
 
 
 
 
 
 
 
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 触角や、まだ二本に分離している口吻を引き抜く。
 
 羽根はまだ小さく軟らかいが、既に鱗粉の色が輝いている。
 これから体液を送り込んで羽根を大きく広げる。
 
 
 
 
 
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 胴体までビッシリと鱗粉が乗った、綺麗なメスのカラスアゲハになった。
 八丈島から他の虫と一緒に頂いた卵から育てたもので、総じて本土のものより美しい亜種なのだが、この個体は特に緑色が濃密。
 
 羽根が伸びるまでは羽化開始から10分ほどと案外早いが、しっかりと固まるまでには数時間掛かるようだ。
 この画像の個体も、まだ尾状突起がフニャフニャしている。
 
 
 
 
 
 
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 これも同じ種類の羽化だが、こちらの個体はずいぶん羽根の色が赤い。
 違う種類のチョウが混じったという事はないはずだが…。
 
 
 
 
 
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 前翅が赤で後翅が緑色に見える。
 
 とりあえず羽根が広がるのを待って見る事に。
 
 
 
 
 
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 羽根が乾くと、案外普通の色。
 
 ミヤマカラスアゲハを飼った時にも、羽化時に翅色が黄や赤に見えた個体が緑色に落ち着くのを何度か見た事がある。
 この類のチョウの翅色も構造色なので、鱗粉が体液で濡れているうちは発色が変わるものなのかもしれない。
 
 
 
 
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 雌雄が揃えば、こうして掛け合わせて次代を得る事が出来る。
 
 
 
 芋虫毛虫 挟んで捨てろ などと嫌われるチョウの幼虫。
 ルックスが極端に違うので、同じ種類の親子と思われないのも無理からぬ事かもしれない。
 
 また、「芋虫がチョウの幼虫だなんて、図鑑で見て知っているよ。」
 と仰る向きも (私を含め) あろうけれど、それだけに、知った気になっているその変身の過程を自分の目で確かめ、一繋がりにした時の驚きは大きい。
 
 飼育環境さえ清潔に保てばアゲハの類は容易に飼え、児童の教材としても有用だと思う。
 飼育未経験の方も、庭のサンショウについたナミアゲハなどから飼い始めてみてはいかがだろうか。