夏秋すれ違い

 
 日が沈むのを惜しんで夕方まで生き物を眺めているので、余計にそう思うのかもしれない。
 まだ暑いというのに、本当に日が短くなった。
 
 
 
 
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 お盆くらいから急に目立つようになるのは、ツクツクボウシの抜け殻。
 
 ミンミンゼミと同じような時期に出て、一緒に オーシンツクツク と鳴いているようなイメージが強いけれども、セミとしては遅生まれというのが実態。
 虫に通じている人は、ツクツクの声を聞くと夏の終わりを感じてしまう。
 
 
 
 
 
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 今年は暑い日が続いたからか、このトノサマバッタをはじめとする直翅の類も成長が進んだらしい。
 もうしばらく前から既に、あちこちで長距離を飛翔する成虫の姿を見掛けるようになった。
 
 夏が退くより先に秋の役者が揃うのも毎年の事ではあるが、今年は特に出番が早いようだ。
 
 
 
 八月中旬以降、いつも虫見のつなぎに寄らせてもらっている人家近くの小ポイントの幾つかに採集者が入り、虫が根こそぎにされているようだ と地元の方に伺った。
 子供たちが採れなくなってしまうので困るが、よその人なので怖くて注意も出来ないという事。
 
 ちょっと間を置いて行ってみると確かに虫の数は減ってしまっていたが、もとより樹液周りの虫は減る時期でもあるし仕方ないかと引き上げる。
 
 
 
 
 
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 それでは来年の事も考え、また少し周囲に新しいポイントでも探そうかと歩くと、こういう時は良くしたもので、何気なく覗いた細い道の行き止まりから少し奥に、まだ樹液を出している木がまとまっていた。
 
 毎年決まって樹液の出の遅い場所というのがたまにあり、夏の始めに新規開拓を頑張る時期に目立たないために見逃されている事が多いようだ。
 
 
 
 
 
 
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 カブトムシ、シロテンハナムグリ、アオ・クロカナブンが頭を突き合わせている隣の枝にカマキリが。
 少しずつ下に降りて来た。
 
 夏の始まりが遅かったせいで樹液周りの面々が居残り、秋の役者が早出するのでこういう事になる。
 
 
 
 
 
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 カマキリが樹液周りに獲物を求めるのもよく見るが、いつもはキマダラヒカゲなどのチョウを捕食しており、甲虫とはお互い干渉しない事がほとんど。
 
 この時もたまたまここに登っていただけかと思ったが、見ていると独特の忍び歩きで樹液周りの誰かを狙っているようだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 よく見ると、アオカナブンが大きく動いた時に、カマキリも少しずつ歩み寄っている。
 他の甲虫三頭が暗い色をしている中、アオカナブンの明るい体色は目立って薄暗い中でも認識しやすいのかもしれない。
 
 鳴いているのは、やはりツクツクボウシ
 
 
 
 
 
 
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 先にお腹が一杯になったらしいアオカナブンが幹を登って行ってしまうと、カマキリも惜しそうに目で追う。
 他の三種は依然として樹液を吸っていたのだが、そちらには見向きもしない。
 もちろんカマキリがアオカナブンを捕らえて齧ったって、とても硬くて喰えはしないだろうけれど、この色取りに食欲をそそられる事は確からしい。
 
 季節の変わり目に面白い顔合わせを見せてもらったが、もう少しすれば空気が軽く感じられるようになり、山の顔ぶれもすっかり入れ替わってしまう事だろう。
 
 
 
 
                                                  2012年 8月  宮城県