自衛的投身

 
 
 
                        よくクワガタを落っことす日だった。
 
 
 
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 ishiさん、藤次郎さんのお二人と、高標高地のクワガタムシを見に出掛けた。
 朝6:30にishiさんが迎えに来てくれて というと早い出発のようだが、いつも夜明け前に動き出すishiさん基準なら、むしろ遅すぎるくらいだったかもしれない。
 途中で藤次郎さんと合流し、8:30頃には現地でヤナギの枝先を眺め始めた。
 
 
 
 今期ヒメオオクワガタはそこそこの数を見ており、50~51mmくらいのサイズまでは確認できているので、目立って大きな個体でもなければ持ち帰る必要は無くなってしまっている。
 また、高い所についている事が多く撮影しづらい種類だが、それだけに却って写欲をそそられる。
 魚眼レンズをギリギリまで寄せられるくらい近くにいて、しかも格好良い大型個体を見付けてやりたい。
 
 こうなると、いつもは高地の採集に不可欠な長竿ネットも邪魔なだけである。
 かさ張る荷物は家に置き去って採集はお二人にお任せし、私はカメラだけ提げてルートを先行、林道沿いの樹木を舐めるようにチェックして虫影の発見に専念する態勢を固めた。
 
 
 
 
 
 
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 その割に冴えない望遠のカットばかりじゃないか と言われると全くその通りで、ヒメオオクワガタはあちこちに見付かるもののどれも高い場所についており、魚眼どころかマクロでも小豆のようにしか写らない。
 もとより300mmズームの望遠端の描写に期待できるものではないのだけど。
 
 
 少し先行し、新しい個体を発見してはお二人に採集をお任せして再び少し先へ…という事を繰り返す。
 
 戻る度、回収・採寸されているであろう個体の大きさを尋ねると、
 「 いやあ… 」 「 なんか、どっかに落ちたね…(笑) 」
 という返答。
 こちらは 「 ああ、それ重力って言いますね… 」 と曖昧に笑い返す。
 異常な空気漂う山の朝。
 
 私にやる気を出させる方法としては上等で、DIO唯一の敗因と同じ。
 
 
 
 
 
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 目の良い人なら小さく写った虫の姿を確認可能かもしれないが、無理に目を凝らして痛めないように。
 
 このようにアカアシ・ヒメオオ混合で数頭ついている所で少し待ち、追い着いたお二人と合流。
 少し手前に停めた車へお二人がネットを取りに戻り、私も一頭ずつ大きく写そうと換えのレンズを一緒に持って来ようと思ったが、これよりさらに奥に生えた高いヤナギがどうも気に掛かり、そのまましばらく眺めていた。
 
 
 するとその木の幹の高さ5mほどの位置、左側から、何か丸くて黒い甲虫の尻がずるずるとはみ出してくる。
 曲率とサイズからするとカブトムシかもしれないが、茶色混じりではなく真っ黒だ。
 それがヒメオオだとすると、ずっと遠くにいるものが近くにいる他の個体と較べて明確に大きく見えており、相当な大型に違いない。
 私は思わず叫んでしまった。
 
 
 私の声を聞いて戻ってきたお二人と、改めて大きな黒いシルエットを観察。
 雌雄二頭が並んでいるのがわかったが、それを差し引いても大きい。
 
 いずれヒメオオであろうとなかろうと、また大きかろうと並であろうと、これを確かめずに先に進むという手は無く、私がナタを持って手前の薮を進み、長竿を担いだishiさんがその後ろに続いて、その虫がついているヤナギの根元を目指す。
 逆側からは両手を空けた藤次郎さんがアプローチし、ややあってその木の根元で三人合流。
 ここまで近付くと、大きな枝の分岐についているのがかなり大きなヒメオオクワガタだという事がわかった。
 
 
 
 目の前にいるものは自己ギネスと同程度に見えるが、あれは2007年に採れたものであり、昔のイメージほど当てにならないものもない。
 また、こういう時はクワガタを落として見失うのも怖いが、散々デカいデカいと騒いだ挙句に苦労して取り込んだ個体が思ったほど大きくないというパターンはもっと怖い ( よくある )。
 
 ishiさんが 「 あれ相当デカいですよ!」 と言うし、私も実際そう思うのだが、ここは精神的保険を掛けて
 「 あれだと52mmくらいじゃないですか…。」
 と言っておく。
 
 この日は何頭も見失っている事もあり、根元に構えた藤次郎さんと私がヒメオオ特有の不意な跳躍落下に備えていたが、慎重なishiさんが差し伸べたネットは危なげなく目指すペアを取り込んだ。
 
 
 
 
 
 
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 ヒメオオ優先にアカアシ交じりで、ロストも多かったが計30頭弱の確認という所。
 上は記事内容からやや時間的に前後した画像だが、この時点での採集分から大きなオス3頭とメス少し。
 サイズは 51mm、52mm 「 など 」。
  
 フリは回収し、見た事は全部吐くべきだろうけど、次の記事の都合を考えると取り敢えずこれくらいで…。
 
 休みの朝にちょっと行って、50mm台の大きなヒメオオを複数見られるというのは結構贅沢だと思う。
 ただの贅沢では済まない、おっかないポイントをishiさんは見付けたものだな
 と唸りつつ、後の記事へ。
 
 
 
 
                                                 2012年 9月  宮城県