夕暮れ虫巡り

 
 
 藤次郎さんから
 「 鮎食べない? 」
 と唐突で嬉しいお話があったので、
 「 食べる食べる 」
 と食い意地の顕わな返事をした。
 
 間も無く、少し前に釣ったという若鮎を携えて藤次郎さんがやって来て、早々に
 「 ミヤマ見に行かない? 」
 と言うので
 「 え?行く。 」
 と逡巡する振りを交えつつ即答し、貰った鮎を冷蔵庫にしまい、カバンを取って戻って同行させて頂いた。
 
 
 先にも少し触れた通り、藤次郎さんのポイントは細い若木にミヤマがすがる。
 例年だと、規模の大小はあれ6月中には一時発生のピークを迎えるはずだが、前回見た限りでは今年はまだ勢いがつかない様子。
 
 
 
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 今年の初ミヤマがいた木を見た藤次郎さんが
 「 小さい! 」
 と声を上げたので寄って見ると、この個体。
 
 ここで虫がつく木は大概細いが、クワガタの方がこれくらい小さいと足場のバランスが取れそう。
 
 
 
 
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 18時前でもう薄暗いが、カナブンやシロテンハナムグリが活動を続けている。
 
 クワガタ同様に細い枝についており、頭で樹皮を擦って樹液を出している事もあるようだ。
 例年クワガタに先駆けて発生するカナブンの類がようやく増えてきたので、ここのミヤマも今年はこれからと言う事かもしれない。
 
 
 
 
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 少し高い所の枝にいたミヤマクワガタ
 やはりちょっと大きな個体になると、細い枝に対して長い脚が余って見える。
 
 感度を上げて明るく撮ったが、実際にはもうかなり暗くなっていた。
 
 
 
 
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 落としてみると、ここのポイントらしいスタイル。
 フジ型の丸いアゴに太った尻。
 
 活動開始直後で、どの個体も微毛が揃っていて綺麗。
 
 
 
 
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 大小の個体を次々チェックしては逃がしていると、妙な傷を持つものが。
 
 広くて形の良い頭だが、表面が荒れている。
 羽化時に頭部の蛹殻がスムーズに離れてくれなかったのかもしれない。
 
 
 発生時期は遅くとも、出てくれさえすれば夏が形になる。
 前回はキジだけがうろついていて虫の気配が薄かったため大いに不安だったが、ここもようやく夏らしくなって来た  と二人で謎のジャッジを下し、すっかり暗くなった道を戻った。
 
 
 家に帰ると冷蔵庫の鮎に家族が大騒ぎし
 「 目が怖い!」
 「 唇が人間みたい! 」
 「 背骨がグニャグニャ! 」
 と絶叫パニック調理を展開していた。
 
 晩飯になると悲鳴もすっかり落ち着き
 「 食べると美味しい。 」
 などと箸が進んでいたから現金なもの。
 
 虫魚両通の藤次郎さんに感謝しつつ若鮎を齧ると、骨や腹ごと食べているのに淡白で、どこか少し甘い。
 独特の青い香りは、間近な暑さの到来を保証しているように感じられた。
 
 
 
 
                                              2012年 7月18日  宮城県