’12年 大ノコ 期前雑感

 
 今年は夏虫の出が遅いと思う。
 虫を見ている人達は大体同じ事を言っているので、仙台あたりでは実際どこでもそうなのだろう。
 
 7月初旬くらいまでは土日に雨が多く、人が山に入る時にたまたま虫が少ないだけかとも考えていたが、ここ何日かの晴れの日でも、場所によっては虫がほとんど出ていない。
 樹液の出やニイニイゼミの鳴き声も寂しいので、ここらの虫のピークはまだこれから という希望的観測のもと、用事の合間にちょくちょく樹液のポイントを歩いていた。
 
 
 
 
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 例年このポイントに入る時に使う南側の入り口が丈の高い草と蔦とですっかり塞がっていたので、とりあえず北西側から入り込む。
 一番手前にある木に近付くと、虫の姿を見るより先に樹上からバリバリという音が聞こえた。
 
 何か大きな甲虫が争う音のようだったので少し様子を見ていると、小さなノコギリクワガタが幹を降りてきた。
 それを目で追いながら視線を落としていくと、ちょっとした樹液の出口にアカマダラコガネがついているのが見付かる。
 (画像ではノコギリクワガタの左側、ヨツボシケシキスイと一緒に樹液を吸っているが、保護色が効いていて見付けづらいかも知れない。)
 
 ここでアカマダラコガネを確認したのは初めてなので少し喜んでいると、同じ木の上から 「バラバラバラッ!」という大きな音を立てて何か落ちてくる。
 大きな甲虫だろうと思い、急いで足元を探すが虫の姿は無い。
 
 
 
 
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 落ちてきた虫を見失ってしまったかと思ったが、幹に巻いた蔦に大きなノコギリクワガタが引っ掛かっていた。
 
 「 バラバラッ! 」 という音は落下中に開いた羽根が蔦の葉を叩いた音だったろう。
 画像でもまだ後翅が収まっていないのが見える。
 
 例年ここで採れる大きなノコギリクワガタの典型的な顔、アゴが幅広でギュッと内側に湾入している。
 良く太ったいい型だったが、こういうアゴなので縦のサイズを稼げず66mmジャスト。
 
 なるほど、こいつが小さな個体を追い払ってバリバリと音を立て、それから勢い余って落ちて来たと言うわけか…
 と納得しながら、もといた樹液の出る場所を確認しておこうと幹を見上げる。
 
 
 
 
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 すると、そこにも大きなノコギリクワガタが。
 先の個体よりも少し大きいように見える。
 
 もう少しゆっくり撮りたい所だったが、見ているうちに幹を螺旋状に登り始めてしまい、せっかくの大型個体を見失いそうだったので、不本意ながら幹を蹴って落とす事にした。
 
 
 
 
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 結局この木から得た二個体が、今月現時点でのBIG2となっている。
 右が先に落ちてきたもので66mm。
 左が後に落とした個体で、67.5mm。
 
 頭の角度などは揃えて撮っているが、ずいぶんアゴの湾曲度が違う。
 こうして並べると左の個体がスマートに見えるが、よその個体と較べて見るとそうでもない。
 右の個体のスタイルが極端過ぎると言うか…。
 
 大きなノコギリクワガタが二頭続けて落ちてくる、というシチュエーションは昨年8月14日の個人的事件を思い出させる。
 あの時は69mmの個体に続いて70mmの大物が落ちてきて、私は瀕死の驚きからしばらく立ち直れなかった。
 
 昨年あの二個体を落とした木と言うのが、何を隠そう(?)今回のこの二頭がいたのと同じ木。
 ポイントの端にあって飛来しやすいとか、樹液をたくさん出して発酵が良く進むとかいうクワガタにとっての好条件があるのだろうとは思うが、毎年毎年同じ木でばかり大きな個体が採れると不思議な気持ちになる。
 
 そのうち注連縄でも巻いて祀ってやりたいくらいのものだが、あまり目立っても困るのでこっそり酒でも撒いて供えようと思う。
 
 
 心残りと言えばアカマダラコガネひささんに採ってあげられなかった事で、最近減っているものをせっかく見付けたというのに、大きなノコギリクワガタを蹴り落とした時に見失ってしまった。
 まあこの場所で初めて確認できたのだから、今期中はまだ発生が続いてくれそうだと期待しつつ、もう少しお待ち頂きたい。
 
 仙台辺りのノコで67.5mmというと、いつもなら個人的シーズンギネスという所だが、昨年は69~70mmという大型を複数見てノコギリクワガタに呪われてしまったので、もう満足出来なくなってしまった。
 
 同じ東北での動向をチラッと伺うと、山形の辣腕CKCさんなどは今年も既に種類を問わず相当数のクワガタを採集なさっているようだが、私のように見苦しくサイズに執着する事も無い方なので、いつの間にか70mmくらいの個体を2、3頭採って子供達に配っていたりするのではないかと思う。
 
 先のひささんが昨年採って来た容貌魁偉な大ノコは71mmあって、私が地元で得た個体以外に東北で70mmを超えた個体の確実な記録としては唯一のもの。
 あれも山形でオオクワガタ狙いのライトに飛んできたもので、あちらのアベレージサイズというのも気になる。
 
 福島に輝く碇星 カシオペアさんも68mm超のノコギリクワガタを複数捕らえていらっしゃるようで、今期中にまだまだ大きな個体を出してきそうで怖ろしい。
 私が近所で見るものと、福島の特大個体とでは顔付きがどのように違うか較べてみたいものだ。
 
 列島を北進する夏が、少し南の隣県で沢山のクワガタを発生させている
 という情報を発信して下さるのは、有難く心強い事だ。
 
 まあ、少なくとも夏休み中の近所の子供達を喜ばせてあげられる分だけ出てくれれば。
 欲を言えばやはり大きいものを撮りたいが、結果は夏の終わりに…。
 
 
 
                                                         2012年 7月。