雲間を縫って

 
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 チョウは天候に敏感な生き物で、さっきまで何頭もそこらを飛び回っていたものが、少し陽射しが翳っただけでサッと一斉に姿を消してしまうという事がよくある。
 
 飛翔中に体温が下がって墜落すれば、アリか鳥の餌食であり、まだ寒い春先に出る種類であればなおさらの事。
 ヒメギフチョウが日照に我侭なのも当然と言えるだろう。
 
 週末の午前にishiさんが御連絡を下さり、仰るには
 「 昼までは雲厚く低温でヒメギフ飛ばず。 望みがあるとすれば午後からでしょう。」
 との事。
 
 ならば、と昼過ぎから出掛け、先に引き上げたishiさんの敵を(勝手に)討つ事にした。
 
 
 
 
 
 
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 曇りの日だと、仙台はまだ寒い。
 サクラも開花宣言が出るだけは出たようだが、あまり咲いていないようだ。
 
 
 現地に着いた昼過ぎには太陽が雲に隠れていたが、こうして陽が低くなりかける頃にようやく明るくなる。
 やがて少しずつヒメギフチョウが現れ、日光浴を始めた。
 
 これは飛び立つオス。
 
 
 
 
 
 
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 暖かくなるとメスも出てきて、種類を問わず草の葉に触れて廻っていた。
 産卵しそうなので追い掛けて見る。
 
 向かって右からウスバサイシンの葉を通過するところ。
 羽根が水平に写っているので、見付けづらいかも知れない。
 
 
 
 
 
 
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 左後方へ飛び去るかと思ったが、ここで方向転換。
 幼虫の食草であるウスバサイシンの匂いを感じてか、カメラの前で急旋回する。
 
 
 
 
 
 
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 すぐに葉裏に懸垂して産卵の構え。
 
 5~6秒ほど経過していそうな印象だったが、画像のタイムスタンプを確認して見ると、三枚のうち最初の二枚は14:34:26、三枚目の産卵姿勢でようやく一秒動いて14:34:27。
 その間、長くとも二秒ほどという事になる。
 
 
 
 
 
 
 
 別の個体の産卵。
 暖かい日に見る時よりも、やや産み付けのペースが遅いような気がする。
 
 腹端の様子を大きく撮りたくて、レンズをマクロに付け替えようとしていたら飛び去ってしまった。
 
 
 
 
 
 
 数えて見ると16卵。
 一卵塊として標準的な規模だ。
 
 これと較べると、記事の頭に載せた卵塊は少し粒の間が空いている。
 隣り合っていた卵が離れた分だけ、産卵後にウスバサイシンの葉が育ったという事。
 
 この日ヒメギフチョウが飛んだのは一時間ほどの間で、また少しして寒くなるといなくなり、カタクリの花弁も下向きに閉じてしまう。
 気候の不安定な春に命を繋ぐ生き物だけあり、細切れの晴間を無駄なく利用するものだ。
 
 
 
 
 
                                              2012年 4月21日  仙台市