豆粒ほどの小さな獅子

豆粒ほどの小さな獅子
2011/1/29(土) 午前 1:29
  
 
 先日の採集で、メスのマイマイカブリを割り出しの際に潰してしまったりしたが、副産物があった。
 
 小さな切り株が朽ちたものを上から突き崩そうとして 積もった落ち葉をどけて見ると、切り口に何か違和感。
 特に何かの姿を認めた という訳でも無かったのだが、どうも引っかかりを感じてよくよく見ると、枯れた小さな葉っぱか砂礫の粒のようなものが切り株の上に乗っていた。
 
 手に取ってみると これに小さな脚が生え口が付いており、驚きながら眺める。
 寒くて死んでしまっているようで動かないが、形が綺麗に残っているのでとりあえず毒ビンに入れて持ち帰り、標本にする事にした。
 
 帰ってから部屋で眺めてみると、全体の形はアリジゴクに近いが 2cmほどとどうもサイズが大きすぎる。
 そして しばらく机の上で転がしていた所 この虫が急に動き始め、毒ビンに入れられた報復という事か 私の指に噛み付こうとする。
 
 
 
 
イメージ 1
 
 
 調べてみると これはツノトンボ類の幼虫のようだ。
 ウスバカゲロウの幼虫であるアリジゴクとは、近い親戚のようなもので、形が似ているだけある。
 
 
 
 
 
イメージ 2

 
 
 こうしてみるととても厳めしい姿だが、野外でコケや枯葉に紛れていると全く目立たない。
 切り株の上にいた時に自然下での写真を撮って置けば良かったと思うが、発見時は身動き一つせず凍死しているように見えたのである。
 
 
 
 
 
イメージ 3

 
 
 アリジゴクや、秋に見つけたクサカゲロウの幼虫などは、このアゴが注射器のような構造になっており、獲物の体に突き刺して直接体液を吸い出せる。
 
 このツノトンボの幼虫もアゴの間に目立つ口器が見当たらないので、同じような構造を備えているのかもしれないと思うが、未調査。
 
 
 
 
イメージ 4

 
 
 意外に脚の力は強く、フッと吹いたりすると ごく短い6本の脚でギュッとしがみついてくる。
 アリジゴクと違って砂を掘らず、枯葉に紛れて小虫を捕まえて食べると言うから、歩行力は優れているのかも知れない。
 
 
 アリジゴクの英名はアントライオン ant lion で、上半身がライオン 下半身がアリの想像上の怪物に由来している。
 アリを喰うウスバカゲロウの幼虫が「蟻地獄」と呼ばれるのだから、本家よりも逞しい大牙を備えたこの虫にも「豆獅子」のような名が与えられても良いような気がするがどうだろうか。
 
 縁の下で簡単に見つかるアリジゴクと違い、こちらは通り名が与えられるほど身近でなかったという事かも知れず、虫屋達からも 冬の野外でツノトンボの大きな幼虫を見つけたという話はあまり聞かない。
 
 
 
 
                                          2011年1月26日採集   宮城県。 
 
 
 旧ブログより↓
  
おはようさんです!
久しぶりに、珍しいものを見させてもらいました。
「アリ地獄」と似てますが大きいんですネ!! (ポチ)
2011/1/29(土) 午前 6:38 東北の温泉バカ
 
 
パット見、アリジゴク?
って思いました。
珍しいですね。
2011/1/29(土) 午前 7:43 ひさ@くわがた
 
 
これは面白いですね♪
飼育してみて下さい♪
2011/1/29(土) 午後 0:19[ ひろ1号 ]
 
 
よくぞ、目にとまってくれた!という感じですね。
すごく珍しいものですね。
怪獣をも彷彿させるいでたちです!
2011/1/29(土) 午後 3:42[ しんさん ]
 
 
毒ビンに入れても死ななかったのは冬眠仮死状態にあったからかな?
ツノトンボの幼虫はアリジゴクに似ると聞いていたけど見るのは初めて^^♪
細部は異なるんだろうけど、瓜二つって姿ですね。
蟻を食ったりするのかな…。蟻よりも他の虫を食うのかな…。
待ち構える地獄と、移動できる地獄。蟻にとってはどっちも嫌か^^;
2011/1/29(土) 午後 5:25 gibachinamazu
 
 
Kenさん、こんばんは。
私も最初は
「なんでアリジゴクが穴から這い出して死んでるんだろう?」
と思いました。
縁の下なんかで見るアリジゴクに較べて大振りで、細かいディティールはちょっとトゲトゲした感じ。
ツノトンボ自体あまり街中で見かけないし、たまたま見つけることが出来て良かったと思います。
2011/1/31(月) 午前 0:02 weaponshouwa
 
 
ひささん、こんばんは。
褐色で幅広の胴体がアリジゴクそっくりで、私もそうとしか思わなかったんですが、眼の付き方や腹側の突起の並びなんかは独特ですね。
反面 おおまかな視点で見ると、やはりトンボのヤゴと通ずる色形をしているとも思いました。
2011/1/31(月) 午前 0:20 weaponshouwa
 
 
ひろ1号さん、こんばんは。
可能ならば親まで と思うんですが、ツノトンボ幼虫の飼育例って聞いた事無いしなあ。
ワラジムシみたいなものを喰ってるらしいので、餌の調達はそれほど難しくないようですが、そもそも真冬に餌をやってもいいものかどうかわからないし。
春くらいに蛹化するのかなあ…。
2011/1/31(月) 午前 0:37 weaponshouwa
 
 
しんさん、こんばんは。
幸い、先に目が利きました。
勢いに任せてブッ叩いたりしなくて良かったですよねえ…。
生息地全体に散在しているのは確かでしょうけど、狙って見つける自信はないですね。
存在は普通で、見付け難いというところで。
ウルトラマンに登場した一対の大きな牙を備えた怪獣の「アントラー」の名前は、アリジゴクの英名アントライオンに由来するそうですね。 (造形はクワガタ寄りに作ったようですが。)
2011/1/31(月) 午前 0:45 weaponshouwa
 
 
義蜂さん、さらにこんばんは。
毒ビンが毒切れ寸前だった事もあるし、低温で代謝が落ちていたのもあるんでしょうね。
ビンから出して少ししてから背中を触ると、90°以上も頭を反らして噛み付く素振りを見せたのには驚きました。
落ち葉の下でワラジムシなどを食べるようで、よく見ると暗所に適した体の構造が見えてくるような気がします。
眼が数個散らばって付いていたり、体側に触角じみた突起が並んでいたりといったアリジゴクとの差は、そのまま落ち葉の下の暮らしに適応した形質なんじゃないかと思うんですよね。
2011/1/31(月) 午前 0:57 weaponshouwa