雌雄嵌合体

雌雄嵌合体
2009/9/5(土) 午前 3:25  
 
 
 
 
 夏の終わりには痛みだけが残る、などと松田優作は言ったもんだが。
 
 2009年もミヤマクワガタを追って山を沼を駆けずり回り、最大は結局71mmを出ず。
 空に流れるのはウロコ雲。
 
 不意に訪れた秋に、私はどうして良いのかわからない。
 
 
 そんな折、gibachinamazuさんから興味深い話がもたらされた。
 ミヤマクワガタの雌雄嵌合体を預かっている、というのである。
 
 雌雄嵌合体、話には聞いた事がある。
 発生段階における性染色体の異常により、オスメス両性の特徴を併せ持つ個体を言う。
 
 gibachiさんの御厚意により、先日これを見せて頂いた。
 
 
 
 実物の視覚的インパクトは相当なものだった。
 目にして一瞬、「何だかわからない」という間があって、それから強烈な違和感。
 
 
 
 
イメージ 1
 
 
 
 
 
 
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イメージ 3
 
 
 
 
 主に右半身がオス、左半身にメスの特徴がよく現れている。
 アゴや耳状突起、オスのみ微毛を備えた上翅といった目立つパーツはもちろんだが、よく見ると触角や前脚、小盾板なども左右で両性の特徴を分け合っているようだ。
 
 普段から好きで追い掛けて、散々目にして来た種類であればこそ尚の事、こうした異常個体から受ける印象は鮮烈である。
 
 この貴重な個体が、死後に庭の隅に埋まってしまうのはいかにも勿体無い。
 僭越ながら、標本作製を請け負わせて頂いた。
 
 変わり物好きとしても、この個体の貴重度から来るプレッシャーから上手に目をそらしつつ、なるべく綺麗な標本に仕上げて採集者の方の手に返そうと考えている。
 
 
 
 大型個体を追い求める事は、この世界の遠い果てへ向かうのに似ているが、今回のような個体は、まるで一つ隣の世界にある別のニッポンからの来訪者のように思えてならない。
 
 ここのタイトルにある『飛ヶ市』とは『ひがし』。
 東の方にある街、と仙台の事を言い換えている。
 
 ただ仙台と言えば良い所をそう言わないのは、人が普段目を向けない非日常の事物を纏め、仙台の隣のセンダイの見方を示してみたいという思いからである。
 
 宮沢賢治が岩手に視たイーハトーヴォでも。
 荒木飛呂彦杜王町でも。
 
 そういう、我々の世界の裏側に張り付いて同時に動いている、向こう側のイメージ。
 
 
 
 全く、久し振りで余談を連ねてしまった。
 
 
 
                          2009年 9月  義蜂さんのご好意により 当個体を紹介させて頂く
 
 
 旧ブログより↓
 
お久しぶりです。
「主に右半身がオス、左半身にメス」ってどうなっているのでしょう?
そんなことがありえるのですね。
なんと珍しい。ポチです。
あっという間に秋の気配ですね。
2009/9/5(土) 午前 7:33 河内のおっさん
 
 
(´・ω・`)希少ですね♪
上翅の長さが違うのがおしいですね・・
2009/9/5(土) 午前 7:52[ ひろ1号 ]
 
 
こんにちは^^
久々のUPにつながる発奮材料になりましたでしょうか?(笑)^^
先日はお会いできて光栄でした^^ゞ
とても楽しい話のオンパレード。是非また近いうちにオフレコでも^^ゞ
拝見させていただいた標本箱、素晴らしかったです。
まるで子供が宝箱でも覗き込むかのように見入ってしまいました^^;
模型趣味をやめて、標本趣味に少しでも入り込もうかしら…。
追伸:あまりプレッシャー感じずに楽しんで作ってくださいヨ^^;
2009/9/5(土) 午前 10:48 gibachinamazu
 
 
おお!凄いミヤマのモザイクだ
貴重ですね^^
2009/9/5(土) 午前 11:46 さぶろう
 
 
画像で見てても「おおー…」となっちゃったぐらいですから、
これを直に見て触れるインパクトは凄いものでしょうね。
この、この世のものとも思われないような奇妙な虫が、地の果ての秘境ではなく身近な野山をヒョコヒョコ歩き回ってたというのは、確かにかえって不思議な感じです。
別世界との往来の出入り口が、野山の陰のそこかしこにコッソリ口を開けてるみたいな、あらぬ想像が思い浮かびました。
2009/9/5(土) 午後 2:53[ zo_bula_bula ]
 
 
 河内のおっさん様、こんばんは。
 
 秋がね、来てしまいましたね。
 
 雌雄型も、実物を詳しく調べてみるとさらに興味深く、出現頻度は数万に一つなどと言います。
 
 私が一番驚いてますが…(笑)。
2009/9/5(土) 午後 11:23 weaponshouwa
 
 
 ひろ1号さん、こんばんは。
 
 どうしてもメス側に引きずられて発育が足りない事が多い雌雄型ですが、同一由来の雌雄パーツだけに、発達が良い個体ほど鞘翅長がズレるのが自然だと言います。
 
 小さなオスメスを張り合わせた贋物は、不自然に腹端が揃っていたりすると聞くので、注意したい所ですね。
2009/9/6(日) 午前 0:02 weaponshouwa
 
 
 義蜂さん、こんばんは。
 
 この度は貴重な個体とお引き合わせ頂き、誠にありがとうございました。
 
 文字の上だけで知っている方だと、却って本人が生きている事が信じられないような所がありましたけどね。
 実に有意義な「会談」でした。
 
 採集品の整理にあたり、丁度手先はほぐれている時期ですが…。
 楽に慎重に、という感じで造らせて頂きます。
 
 完成する頃には、もう寒くなってるのかな。
2009/9/6(日) 午前 0:49 weaponshouwa
 
 
 さぶろうさん、こんばんは。
 
 雌雄型とは聞きつつ、それと気付くまでは少しかかりましたからね。
 
 アッ!と気付いた瞬間の混乱って、ホント凄かったですよ。
2009/9/6(日) 午前 1:02 weaponshouwa
 
 
 zo_bula_bulaさん、こんばんは。
 
 これまでも割に変わった物を見て来たつもりでしたが、これは凄かったです。
 
 およそ左右対称型、という生き物の前提から無視して来てますからね。
 
 虫体と同様に、世界の境界も継ぎ接ぎになってるようなイメージが頭を離れません。
2009/9/6(日) 午前 1:15 weaponshouwa
 
 
M-TSB-CLUBのホームページにも似たような個体がありましたけど、同じ物かな?モザイクにもいろいろありますが、わりと綺麗な雌雄同体って感じがします。なかなか出会えるもんじゃないのでお宝画像ですね。
2009/9/6(日) 午後 6:24 ふじたいら
 
 
これはすごい。
初めて甲虫の雌雄同体を見せて頂きました。
随分前に蝶は見たことがあるんですが、ここまで中央で別れていたかは記憶にありません。翅しか見なかったもので。
1枚目で映画「フライ」を思い出しました。
この世も知らない生命で溢れているような...
2009/9/7(月) 午前 0:31 雷蔵
 
 
自然界は不思議だらけですね。
人間だったら、いずれ、どちらかを自分で選べるのでしょうが。。。
でも。。。不思議。。。そして、ちょっとかわいそうです。
それでも、生を全うしてほしいです。ポチ☆
2009/9/8(火) 午後 10:04 ポン母
 
 
 ふじたいらさん、こんばんは。
 
 ご指摘の通り、MーTSBーCLUBの盃さんの御厚意により実見叶ったのが、今回の個体です。
 
 胸部は若干モザイク状に両性が混交していますが、基本的には右オス左メス。
 
 最初は気付きませんでしたが脚の長さや幅もきっちり異なり、いわゆる半陰陽に近いようです。
 
 これが野外品で、普通に木にとまっていたというから驚きですよね。
2009/9/11(金) 午前 0:13 weaponshouwa