リレーする王冠
だからこそ、2005年の夏終盤に 72.5mmのミヤマクワガタが採れたと聞いた時には、みんな驚いた。
先日、DAISUKE さんとお会いした。
数えてみると、四年ぶりになる。
本当は’09年の七月にも虫のイベントで顔を合わせるはずだったが、その日の午前中に私が ちょっと断崖から落下する という失態を犯して叶わず。
以降、先日まで間が開いてしまったのだった。
この DAISUKE さんこそが2005年の大ミヤマの採集者。
私はその後ろを、息切れしながら一周遅れで追い掛けている格好だ。
2005年 8月 宮城県 DAISUKE 氏 採集 ( 再展足済 )
今回、採集者ご本人のDAISUKEさんから掲載許可を頂いたので、前記の個体をここに。
まず目を引くのはアゴの長さで、湾曲は緩くスッと伸びたタイプ。
内歯一本ずつも長く発達している。
アゴや頭部も立派だが、胸部が前方に向かって非常に幅広く、人間で言うと首が太い感じ。
近隣で採れた個体と並べてみた。
一応、左からエゾ~フジ型の流れ。
左端が先日、夏の終わりに滑り込んで採って来たもの。
太いと言うか腫れていると言うか、内歯を吸い込んで膨らんだような大アゴ。
実際内歯は特に小さい。
左から二頭目は折に触れて紹介しているもので、自己ギネスの74mm。
やせた胴体から大きな頭部 というこのポイントの特徴を、左端の個体と共によく表している。
鞘翅の色は特に明るい。 ’07年8月21日 宮城県。
三頭目は前記した DAISUKE さん採集の個体。
大きな第一内歯と、アゴ先端の急カーブ。
このポイントで初めて採れた大型個体で、このポイントのミヤマは大きくなるとこんな顔になるのか と感心したものだったが、それ以降こんな変わった顔で幅広の個体は見ていない。
両アゴ先の欠けがなければ完全に72mmを超えるが…というサイズ。
左から二頭目の個体の一月前、’07年の7月22日に採れたもので、ここらの大型個体としては珍しく一次発生の個体と思われる。
せっかくなので県南部、藤次郎さんの持ち場の個体も並べてみた。
左の二頭は 藤次郎さん と その甥っ子のK太さん採集。
75mmある左の個体は県内最大で、採集時の様子が藤次郎さんの記事に残っている。
左から二頭目、72mmの個体と兄弟のように似た顔をしており、いずれも二次発生の個体。
右二頭は去年、今年とシーズン序盤に採れた個体で、いずれも70mmほどのエゾ型。
シーズンの初めにエゾ型→フジ型へ という出方がはっきりしたポイントだと思う。
思えば’05年にDAISUKEさんが採ったミヤマを見せられて、自分にも可能性があると (無謀にも) 思って山通いしたからこそ、’07年以降に74mmを含む地元としては特大の個体を見る事が出来た。
その時その場で受けた衝撃をどうにかして残したい と思い、私は翌年に小さなカメラを買って虫の写真を撮り始めたのだった。
またそうした写真を載せた当誌が、最近お世話になり通しの藤次郎さんとの貴重な出会いの発端となった。
どういうつもりであれ、形に残したものは思わぬ経緯で周囲の人や、まだ会わない誰かにも波及する事がある。
私は鈍足未熟な継走者だからこそ、バトンは大事に。
写真や標本を下手なりにもなるべく綺麗に作り、正確な記録と共に大切に残そうと思う。
2013年 9月。