新年新色

 
 
 能動的な分身 に続いては 「 ドッペルゲンガー 」 の話をと考えていたのだが、ここで使いたかった資料が見付からない。
 芥川龍之介の 『椒圖志異』 がそれで、年末年始に書棚や積本の山をさらったにもかかわらず出て来ない。
 
 内容としては全集や文庫に収録されているものと同じ龍之介が創作メモに使った大学ノートなのだが、活字ではなく同型のノートにオリジナルの書き込みをそのまま印刷し復刻したもので、落書きなども逐一再現されているのが面白いからついでに紹介しよう と思っているうち、当初の本題よりもこの資料の捜索に躍起になってしまった。
 それでもまだ見付からない。
 
 200年ほど昔、仙台に出たドッペルゲンガーの事など興味深い話が載っているものなので、もう少し部屋を探して見ようと思う。
 (近所のブックオフに置いてあったりしたら嫌だ)
 
 
 
  

 
 
 
 
 さて、初冬から間があいてしまったが、冬でも いや冬だからこそ虫を探していた。
 冬に見たいのはマイマイカブリである。
 
 これもいっそ春先くらいに一冬分の成果をまとめようかと思っていたが、今期も一緒に出かけていた藤次郎さんが年明け早々に素晴らしい個体を掘り出し、採集期をまとめつつある。
 その際に引用して頂くための画像を、とりあえずこちらに。
 
 
 
 
イメージ 1
 
 
 
 頭胸部に紫、青、水色から明るい緑へのグラデーションが現れている。
 
 宮城県北部で採れたものでキタカブリには違いないのだが、通常頭胸部に出る赤紫色とは掛け離れていて、未知の別亜種を思わせる。
 
 
 
 
 
イメージ 2
 
 
 
 頭胸部の色が鞘翅に飛び火している個体をよく見るが、この個体はキタカブリとしての緑色の土台に水色が溶け込んでいて不思議な色調。
 
 体長は42.5mmで、♀としては標準的なサイズ。
 
 
 
 
イメージ 3
 
 
 
 見る角度によって色が変わる。
 色変わりでも、構造色の仕組みは同じ。
 
 藤次郎さんは昨期も青いキタカブリを見付けた事があったし、どうも自然に対する抽選確率そのものが私などとは違うのではないか。
 今回の個体も含め、採れた虫は
 「 山で生きたものが見られれば満足。 後で写真撮って記事にしなよ! 」
 などと、事も無げに私に下さる。
 この執着の薄さや度量の大きさが強運の根源だろうと思うが、なかなか真似は出来ない。
 
 それで毎度申し訳無いと言いつつ、彼を無理に付き合わせてしまうのだった。
 
 そうやって出掛けた今冬の話がたくさんあるので、この個体が採れた日の事を含め、追って載せようと思う。
 
 
 
 
                                         2013年1月 宮城県北部で採集の個体。