晩秋 頼みの顎
徹夜明け、もう寝ようと思ったところにメールが。
ろくなタイミングではないと思いながら確認すると、藤次郎さんが山へ誘うのであった。
ここでついて行くのだから行く方が悪い。
「 もうクワガタの時期でもあるまい。」 と呟きながら ススキにヒメオオクワガタ の写真を撮ったのが、もう二週間前の事。
今期はもうおしまい、また来年ですね と言ってやや紋切り型に話をまとめてしまっている。
青空の下、車を飛ばす藤次郎さんに
「 一体どこへ向かうのか、キノコを集めてまた芋煮でもやるのか。」
と尋ねると、
「 決まってないんだけどね。」
という返答。
しかし、その言葉とは裏腹に車の走行にはいささかの迷いも見られない。
漠然と恐れながら予想したとおり、実際クワガタ方面へ向かっているようだった。
ガッチリ決まっているではないか… と思っても遅い。
![イメージ 1](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/w/weapon-shouwa/20010101/20010101001400.jpg)
傾斜した季節。
もう往く秋である。
冬を招く手。
![イメージ 2](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/w/weapon-shouwa/20010101/20010101001410.jpg)
ドッと気温が落ち込んだ今秋は、紅葉も初動を躊躇ったようだが、ここに来てまずまず色付いた山。
いよいよクワガタという感じではないが、来てしまった山。
ヤナギがあれば枝先を見上げ、黒い姿を探してしまうのが悲しい習性。
ルート上にクワガタの姿は全く見られず、少し前に降った雨で削れた道を敬遠して引き返すが、途中どうしても気になる一角があって車を停めてもらう。
日照なのか風当たりなのか、ここのヤナギはまだ水分を失っておらず美味そう。
大きな木からその隣の若木に視線を下ろすと、さっきまでここにクワガタがいましたよ と言わんばかりの齧り痕が目立つ。
「 この木なんか良さそうだけど 」
に続けて いないな… と言おうとした時、隣に来ていた藤次郎さんがそれを遮るように
「 いた!」
と叫んだ。
![イメージ 3](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/w/weapon-shouwa/20010101/20010101001420.jpg)
すぐ隣の枝を見ていたのに、気付かない。
言われれてから見れば、どう見てもいる。
というよくあるパターン。
実際は逆光でもっと見辛く、いずれにしても小さな姿。
そこまで虫のいる雰囲気は無かった状況で、藤次郎さんもよくこれを見付けるものだ。