アカアシ甲子園へ

 
 
 先の記事でも触れた通り、東北で大きなアカアシクワガタはなかなか見られず、野外の個体で50mmを超えれば良い所 というのがしばらく前までの大方の見当だったが、今では少ないながら図抜けて大きなものもいる と言える。
 
 アカアシクワガタ飼育の権威であるハルさんが宮城県産の個体を取り上げてくださったので、画像をお送りしてから展脚が進んだものを含め、改めて紹介しておきたい。
 
 
 
 
 
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 今期も藤次郎さんが53mmを少し超えるものを採っている。
 10月に入ってから宮城県内で採れたもの。
 急に涼しくなった今秋、アカアシクワガタは早目に姿を消すと思い込んでいたので少し驚いた。
 
 まだ展脚中だったので脚がグニャグニャ。
 幅もあるが、長さが目に付く。
 
 
 
 
 
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 左が一枚目の画像と同じ藤次郎さんの採集個体で、展脚が進んだ所。
 右にはishiさんが2009年に岩手県で採集された、およそ同寸の個体を並べてみた。
 
 同じような大きさでも、縦横の比率やアゴの太さには結構差があるようだ。
 内歯から先のアゴの造りも個性があって、それぞれサーベルとナタを思わせる。
 
 
 
 
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 こちらは別の大型個体の内歯。
 
 アカアシクワガタのアゴはスッと伸びて平面的な印象だが、大内歯に沿って波頭のように上から被さる突起と、やや前を向いたアゴ先寄りの小歯とが複雑な立体構造を作っている。
 ヤナギの樹皮を噛み破るヒメオオクワガタのニッパーのようなアゴに対し、枝を擦って傷を付けるのに向いていそうな形。
 
 
 
 
 
 
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 そのアゴの持ち主がこちら。
 宮城県でも大型個体を探そうという気になったのは、これが採れたからこそ。
 
 あまりに太っていたので、やや下から見上げた段階ではヒメオオクワガタだとしか思わなかった。
 
 上翅に不思議な傷を持っているが、羽化から硬化までのわずかな期間に蛹室内で事故があったのだろうか。
 全体の大きさに気を取られるが、アゴ先の湾曲が強く、特大のコクワガタを思わせる。
 
 
 
 
 
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 三頭 (+ゲスト ) 並ぶ。
 展脚が進んだので、ハルさんには撮り直した画像をお送りしてアカアシマップに追加して頂こうと考えている。
 
 やはり右の個体はアゴ先の湾入が直角に近いほどで、これが標準的な形だったらあと1mm程度稼いだだろう… などと欲が出ていけない。
 これが宮城での限界近いサイズに現れる特徴なのか、それともこの一個体の顔なのかという所が気になる。
 
 ともあれ、こうして東北でも大型のアカアシクワガタを諦めないで良い という事がわかったのは大きな収穫だったと思う。
 
 
 今期藤次郎さんが採った個体と掛けたメスが、既にハルさんの元に届いているそうだ。
 なんだか、地元高の野球部を甲子園に送り出すような心境。
 厳しい環境で頑張ってきた宮城県産の幼虫を、ハルさんが調整した環境で飼ったら、突然60mm超えの怪物アカアシが出現して飼育ケースを食い破るのではないか などと期待している。
 
 
 
 
                                                         2012年 10月。