春秋 一巡り

 
 
 
 十月も半ば。
 もう朝夕は冷えるので、慌てて冬物を引っ張り出しながらくしゃみをしたり。
 
 山の秋も急速に進んでいる。
 今年のクワガタ探しも長い事続いたが、これにとどめを刺すつもりで ishiさん、藤次郎さんの後に続いた。 
 
 
 
 
 
 
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 この日の出発は昼前と遅かったものの、車載温度計に目をやったishiさんが
 「 12℃か…。」
 と呟く通り、かなり寒い。
 
 カメラを構えると指が冷えて手袋が欲しいほどだが、ヤナギの枝を見上げながら山道を進むと、居残りのヒメオオクワガタが散見される。
 
 例によって徒歩で先行し、クワガタを見付けたら撮りながら待ち、二人が車で追い着いたら採集を任せてまた先へ とやっていたら、強風に加えて雨が降ってきた。
 
 
 
 往路では採ったり逃がしたり、日が射す谷間には冷たそうな虹が掛かったり。
 
 まあ幾つかクワガタ見たし、この時期としてはまずまずだろう という茶濁しムードが漂う復路の車内。
 折り返しからそれほど進まないうちに、藤次郎さんが
 「 ちょっとここで…。」
 と何か確信めいたトーンで停車を促した。
 
 道から崖側にはずれた所に斜めに生えた細ヤナギを示されると、車内から窓越しにもヒメオオクワガタの姿が認められた。
 
 
 
 
 
 
 
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 藤次郎さんは二週前からこのヤナギに目を付けていたが、足場が悪い事もあって来る度についているクワガタの半数をバラバラ落としていたと言う。
 
 確かに枝にも幹にも齧り痕が見え、小さい木の割に条件の良さが伺える。
 
 
 
 
 
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 別の枝にはメスの姿。
 タケノコの皮を剥くように枝を破っている。
 
 もう染み出す樹液の勢いも衰えて、深く齧らざる得ないのかもしれない。
 
 
 
 
 
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 ただでも寒い日の16:00~17:00辺りでも、こうしてヒメオオクワガタはヤナギに登っている。
 秋が深まると同時に美味い木は減り、また遅くに美味くなる木というものもあるようで、同じ場所を9月に見た時とはかなり付き方が変化していた。
 
 実績のある木に頼り切らず、見えづらい所に良い木を見付けていた藤次郎さんは偉い。
 
 
 
 
 
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 寒くなって乾燥したヤナギから少しでも多く吸汁しようとすると、樹皮を深く食い破って頭を突っ込まなければならない。
 それでこうして汚れているものが多かった。
 
 アゴの先も磨り減って丸くなってしまっている。
 
 
 
 
 
 
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 昨年はishiさんが十月に特大のヒメオオを当て、十一月にも野外で活動している個体を観察されていたので驚いたものだったが、今年はどうだろう。
 酷暑から一転、スイッチを切り替えるように晩秋へ飛び込んだ感のある今シーズンは、さすがのヒメオオクワガタもそろそろ野外の活動を終えるのではなかろうか。
 
 
 また来年、同じ場所で。
 
 
 
 
                                             2012年 10月14日  宮城県