日本代表

 
 
 同じ仙台の 「 東北の温泉バカ 」 こと Kenさんは野鳥に強い方だが、山で会うものは虫を含めて広く扱っておられ、大きなミヤマクワガタや樹液に来たルリボシカミキリなどの興味深い記事を突然放り込んでくるので油断ならない。
 
 少し前にはオオムラサキの記事を載せてくれていた。
 大きなメスのオオムラサキで、まだ綺麗な個体。
 
 そう言えば例年だとオオムラサキを見るに良い時期は7月頭くらいで、8月に入れば飛び古して汚損しているものだが、昆虫の発生が遅い今年はいつまでも新鮮な個体が樹液に集まっているのを見る。
 
 
 
 
イメージ 1
 
 
 
 この時一緒にいた藤次郎さんが 「 いるなあ… 」 と見やる方に目を向けると、カブトムシが頭部の突起で長細く傷つけたヤナギの枝に、行列を作って集まるアオカナブンたち。
 その背後にオオムラサキの後翅が覗いている。
 
 大きな図体もあってか他の樹液性のチョウよりも太い幹に来ている事が多いが、この時は珍しく細く高い枝に来ていた。
 
 
 
 
イメージ 2
 
 
 
 
 こちらは太く育ったヤナギで吸汁するオス。
 一緒にいるのは、カナブン、アオカナブンシロテンハナムグリの面々。
 
 タテハチョウの多分に漏れず縮小した前脚を畳んでいるので、樹皮を掴む脚は四本しかないのだが、頑強な造りでパワーは十分。
 甲虫と頭で押し合って樹液酒場の席を取るチョウは、このオオムラサキくらいのものだろう。
 
 
 
 
 
 
 
 こちらはメス。
 ちょっと羽ばたいて向き直ったりする様子は、垂直面での立ち回りに特化した種類ならでは。
 
 動画中、レンズにクモの巣が張り付いていたり、Nikonのストラップや自分の脚が写っているが…。
 突如新規開拓を思い立って彷徨った挙句、炎天下に行き倒れ寸前、本当に新しいポイントを見付けて放心していた時の事なので御容赦。
 
 人跡皆無の場所だけに樹間がやや混んでいる部分もあるが、このカブトムシばかりの時期に結構クワガタも来ていた。
 これから余計な枝を減らして下草を刈り、専用の撮影ポイントにしようと思っている。
 かつて沢山のクワガタが見られたヤナギ林がバサバサと伐られ、また乾燥が進んで虫の姿が激減している近年、採集圧を気にせずに撮影が出来る場所が増えるのは嬉しい。
 
 
 
 
 
イメージ 3
 
 
 
 単に 「ムラサキ」 と言うと、単純一様の色紙のような感じを想像されるかもしれないが、実物は光線の強さと当たる角度で幻光を発する。
 この華麗な装飾と雄大さは世界に通用するもので、シーボルトが来日した頃にヨーロッパの研究者・愛好家が日本からもたらされる本種の標本を心待ちにしたという話を聞く。
 
 実際には大陸や東南アジアにも亜種や近縁種が分布するが、どれも斑紋の並びが大雑把だったり裏面が薄汚くまだらだったりと、(贔屓目もあるだろうけれど) 日本の国蝶として夏の森に舞う 「 オオムラサキ 」 の気品には及ばないように思う。
 
 
 
 
 
                                                2012年 8月   宮城県