保護色の解体

 
 
 急にまとまった雨が降ると小さな流れを作り、晴れると水が引いて、道沿いに細長い砂地が残る事がある。
 それに沿って歩くと数頭の虫が足元から飛び立ち、それぞれ少し離れた所に降りた。
 
 そのうちの一頭が降りた場所に見当を付けて近付くと、小さな甲虫がじっとしているのが見える。
 
 
 
 
 
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 ニワハンミョウだった。
 
 春過ぎになるとよく林道で見かける種類。
 本家の(?)ナミハンミョウに較べると地味だが、羽根を広げて飛ぶ時などは、腹部背面が緑色に輝いて美しい。
 周囲にいる数頭の個体を見比べると、緑色のものから黒っぽいものまで色味の差があるようだ。
 
 
 
 
 
 
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 地味 とは言ったものの、拡大すると壮絶な色彩の嵐。
 鞘翅一面に無数の青い弾痕が刻まれている。
 
 どこかでこんな色の鉱物標本を見たような気もする。
 
 
 
 
 
 
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 こうして少し引いて眺めると、砂粒のクリーム色まであしらった見事な保護色。
 普段の活動場所である石混じりの砂地によく溶け込んでいて、とまった所がわかっているはずなのに見付からない事もある。
 
 
 
 
 
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 青紋の並びは、グラスに注いだソーダの泡のよう。
 
 渋い保護色をちょっと解体すると、すぐに極彩色が溢れ出してくるというのは面白い。
 これが光の断面、視覚の材料とも言えるだろう。
 
 寄れるカメラならどの機種でも同じように撮れるので、近所で見掛けるハンミョウの類をみんなで撮り較べて見たら、他にも意外な色と模様が見られると思う。
 
 
 
 
 
                                                 2012年 5月  宮城県