小金環 ウンモンテントウ

 
少し前に、義蜂さん( = gibachinamazuさん ) と虫を探していた時の事。

ちょっとした谷から一段低い場所に向かっている小さな流れ込みがあり、それに沿って何か面白い水生昆虫でも泳いでいないかと覗きながら歩いていた。
すると、流れの中から顔を出している石のうちに、やたら赤っぽい色をしたものが目に付く。

なんとなく近付いていくと、その赤い石の真ん中に、さらに赤い虫がとまっているのが見えた。
丸っこいのでテントウムシだろうとは思ったが、ナナホシにしては紋が多いし、赤地に黒紋が並ぶタイプのナミテントウにしても体全体のサイズが妙に大きい。



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もっと寄って見ると、黒紋の周囲に縁取りが施されているのが見えた。
このテントウムシは、ウンモンテントウ。


全くの平地というような所では見掛けず、少し山寄りに分布する種類。
仙台あたりだと、クワガタで言えばアカアシクワガタ、チョウならサカハチチョウなどと同じような標高分布をしているようだ。
以前見た個体は地の色がずっと薄いオレンジ色だったので、今回の個体は近縁の別種か何かだろうかとも思ったが、もともと地色の変異は大きいらしい。

義蜂さんを呼んで
「 このテントウムシ、格好良いなあ! 」 と讃えながら撮る事に。
私がバシバシとストロボを光らせると、ウンモンは赤い石の上を大儀そうに歩き始めた。




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せっかくの珍しい顔なのでキープし、あとで飛び立つ所を見てみた。

中脚→前脚→後脚の順で離すのは、甲虫共通の決まり事らしい。
近所で見るナミテントウナナホシテントウは、指などにとまらせると一目散に高い方へ走って登り、即飛び立とうとするものだが、このウンモンテントウはあまり高低に拘らずに歩いて周囲の状況を確かめているように見えた。
また、近所で見る他のテントウムシのように腹側が完全な平面ではなく、幾らか膨らんでいる。




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ウンモンテントウの縁取紋から、こういった感じの塗り物を私は連想した。
しかしその場ですぐに津軽塗とか唐塗といった名前は出てこず、 「 ほら、おばあちゃんの家にあるアレ… 」 などと呻くのが精一杯。

一方で義蜂さんは、少し間を置いて
「 …金環。 」
と呟いた。

そう言えば、先日の一大天文イベント金環食
二人とも、それぞれの狙い通りの観測は何やかやで出来なかったが、この小さな紅粒の背中に並ぶ金環に慰められる格好となった。

以前の記事でも触れたが、極大極小に共通して現れるパターンには、宇宙の設計図の端っこが見え隠れしているような気がする。



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後で知ったが、ウンモンテントウの中には黒紋に淡色の縁取りが出ない、赤地のナミテントウと同じような型も出るそうだ。
それでもナミテントウと較べれば明らかに大きいので区別できるはずだが、それ一頭だけ見ても比較の目安がないのでわかりづらいかもしれない。

私もこの日同じ場所で、赤地に黒紋の大きなテントウムシをもう一頭見て大型のナミテンと決め付けていたのだが、あれもウンモンだったのではと気になる。


カメノコテントウやオオテントウ、ハラグロオオといった特大テントウ達に次ぐ大きな種類で、背中の模様の美しさは極め付け。
ライトにも来る事があるというので、夏にクワガタ狙いのトラップを張る方も、赤くて丸い虫が来ていたら注意してみると楽しいと思う。




2012年 5月  宮城県