地震で縮んだ

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 割と熱心に虫を採るものの、宮城県から外に出る事はあまり無い。
 
 遠出をしても、南はキベリタテハを採りに蔵王、北がヒメオオクワガタ目当てで花山村に行くくらい。
 そうして2007年9月25日に花山村で得たのが画像右の個体。
 
 晴れてはいたが酷く風の強い日で、林道脇に並ぶヤナギは大きく揺れていた。
 それほど採れる気もせず、のろのろと林道を進むと、左手から頭上へ張り出したヤナギの枝に何かが動いている。
 後ろから来る同行者に聞くと、「ツノあるよー!」という返事。
 数歩下がって確認すると、太ったクワガタが体をくの字にし、短い顎で枝を擦っているのが見えた。
 樹の幹を蹴っても落ちず、網も届かない。平らな幹をよじ登り、クワガタが付いた枝に取り付いて体重を掛けて揺すると、真下の道に硬い音を立ててヒメオオクワガタが落下。
 これが初採集の個体となった。
 
 図鑑で見る標本写真からは、脚ばかり長くて華奢な虫、といったイメージを受けていたが、実物は驚くほどゴツい。
 広い頭部、上向きに立った内歯、腹部は分厚くて円筒形に近い。
 測ると48ミリ。同サイズのコクワガタと比べたら、倍は重そうである。
 
 気を良くして奥へ道を進むと、ごく小さな沢と接近した場所のヤナギの幹に黒い影。
 ヒメオオは振動に敏感な種だと聞くが、とまったその樹を蹴ろうが叩こうが反応無し。
 また登るか、と半ばまで樹を登った所で落下音。
 半笑いで樹を降りるが、落ちたクワガタが見つからず、凍り付く半笑い。
 
 10月近くで落ち葉に埋まりかかった日陰の沢に、一匹のクワガタを探すのは至難である。
 落ちた音はデカかったんだけどなあ と諦めかけた所に、同行者が鋭い声で
 「いた!」と叫ぶ。
 
 早く捕まえて!と返すと
 「さわれません…」
 同行者は虫屋ではない。
 
 沢を少し下に流されて、落ち葉溜まりでもがいていたのは、これもヒメオオクワガタ。
 拾い上げた個体はやたらと太く、持ち重りがする。
 長く生きたのか、内歯と顎先が丸く減っているが、ツヤ消しの頭胸部が厚く張って迫力は十分。
 
 沢から道に戻ってこれを測ると、ノギスが差したのは55ミリ。
 「うおーっ!」と快哉を叫ぶ。
 月刊むしのギネスが58ミリほどなので、このサイズには大満足である。
 この後はニ個体を追加。数は少なかったが、いずれも50ミリ手前の大型。強風で小さい個体が振り落とされたのか、と考えたが確かな事はわからない。
 
 翌2008年も欲を出して、全く同じ場所を訪れたものの、採れたのは画像左のチビ。
 24ミリ台という所だが、一応ヒメオオの特徴が出ている。
 
 同年6月の地震で道があちこち崩れていたので、あまり深追いはせずに撤退した。
 どうせ今年も行くが。
 
 
 
                                                                     2009年 4月14日