県境迫る

 
 
 前回の記事に続いてナミテントウの変異を と考えていたのだが、身辺の歩行虫愛好者様各位の要望もあり、冬の宮城に輝くキタカブリを先に並べておく事に。
 
 
 
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 最近は枯材や崖の肩から掘り出した虫を、カメラに付けっぱなしのマクロレンズで撮るだけという事が多く、マイマイカブリの証明写真のような似たカットばかり並んでしまい、撮っている本人としてもやはり面白くない。
 まあ、どう撮ってもキタカブリは美しいのだが、モデルの良さに辛うじて救われているというのも心苦しいもの。
 
 ザックに眠る私的標準レンズこと魚眼の出番が待たれる(?)所だが、折に触れてこぼしているとおり、最近は四週連続で雨雪に降られてカメラからレンズをはずす事も出来ないので困っている。
 
 
 
 
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 こうして魚眼で撮ったキタカブリとなると、ほとんどが雪が酷くなる前の12月頃の画像という事になる。
 
 これは古い水路の端に突き出た切り株に入っていた個体。
 木質は堅いが叩いてみると音は軽い、という位置を慎重に削り進むと、予想通り空洞が開いてメスのキタカブリが現れた。
 付近には似たような切り株が並んでいて、どれもやたらと堅い割にはそこそこキタカブリが入っている。
 
 この場所を経て一番上の画像の個体が出た材置き場に至り、その二週間後に藤次郎さんと再訪した折に青いキタカブリが出たのだった。
 
 
 
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 これは先週、半分がた岩手の空気混じりという北寄りを探した時のもの。
 朝から雨が続き、ようやく見付かり始めたここのキタカブリも、掘り出してすぐに雨粒を浴びて色が変わってしまい、例によってマクロで証拠を抑えるのみ。
 
 早春の冷たい雨が降りしきる中、全身濡らしてピッケルをぶら提げ森の中を徘徊する男と出会ったら、人は何と思うだろうか。
 客観視するまでもなく狂気じみている。
 いっそおかしみさえ感じるかもしれない。
 
 やはり人跡少ない場所でやるのが良い気がする。
 
 
 
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 ここで出たオス。
 
 頭胸部にも若干色味の差は有るが、おおよそ赤紫。
 鞘翅の緑色にはかなり幅があり、明るい黄緑から深い青緑まで。
 
 一見暗く見える青寄りの個体でも、光沢自体は強いという事がある。
 
 
 
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 こちらはメス。
 
 左側三頭は藤次郎さんが出したもの。
 およそ色味が揃わない。
 
 左端の個体は胸部に亀裂があるが、一箇所に数頭入っていた所を引っ張り出したうちの一頭で直接ピッケルは触れておらず、触って見た感じでは前にどこかで負った傷が固まっている様子。
 左から二頭目は妙な色。
 実際は頭胸部がより黄色味を帯びて見え、乾燥が進むと以前見た金色のオスのような色に落ち着くかもしれない。
 
 右端に一頭離れているのは、少し前に付近の下調べに入った際に、川沿いに残ったスギの切り株から見付けた個体。
 マイマイカブリの生息密度が薄い所で苦労したが、こうした場所を消去法で除けておいてこそ、後の狙いが付けやすくなるので無駄ではない。
 と自分に言い聞かせる。
 
 
 
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 最初の場所、十二月に戻ってもう一枚。
 
 これは切り株から出した個体がその切り口まで登った所を撮ったもので、厳密には生態写真とは違うのだけれど、いずれにしても自然下で周囲の様子が見える、こうした画像の方が楽しいと思う。
 
 もう春も近くマイマイカブリも這い出してしまう事だし、快晴祈願とは言わないからせめてレンズ交換くらい出来る気候を天に願いたい。
 
 
 
 
                                      2011年 12月、 2012年 3月   宮城県