Green in White
ここの所、どうも写真が増えない。
例によってひささんや藤次郎さんら、優しき面々と山へ出掛け虫をほじってはいるのだが。
毎度言う事だけれど、今年はどうも雪が多い。
積もっている雪ならどかして掘れば済む事だが、山行当日の朝から晩までドサドサと雪が降っていては蹴飛ばして進むのも一苦労で、場合によっては目を開ける事もままならない。
カメラも防滴とは言え完全防水とは違うので鞄から出せず、単なるトレーニング用のウエイトと化している。
それで、どうも写真が増えない。
つい先にも藤次郎さんと仙台市の縁をなぞるように数箇所のポイントを当てたのだが、大雪が雨に変わってしまったこの日はついに生態写真がゼロ。
いずれも初めて入った場所だったが、なぜか45mmほどの大きなコアオマイマイが続々と出て来てくれて二人で喜んだり、それだけに写真にならなかったのが勿体無いとやはり二人で嘆いたり。
持ち帰った虫の標本写真を載せるのは簡単な事だが、それだけでは寂しい。
下手であっても生態写真が載ってこそ当博物誌らしいというものだろう、と人から言われ自分でもそう思う。
などという大雪恨み節を二本背負いで吹っとばし、写真は貯金で間に合わせるのでご勘弁を。
![イメージ 1](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/w/weapon-shouwa/20010101/20010101052240.jpg)
雪の中で掘り出すキタカブリは、ガチガチに凍っている。
これはマツからでたオスで、越冬窩中の水分で出来た滴が体表でボタン状に凍結していた。
この日出た他の個体に比べ、頭胸部の色が濃い。
![イメージ 2](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/w/weapon-shouwa/20010101/20010101052250.jpg)
開いた越冬窩に空から雪が。
背中に乗った雪の結晶の様子がいくらか見える。
この日の雪も酷かったが、水分の少ない硬い雪粒だったのでカメラが出せて良かった。
![イメージ 5](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/w/weapon-shouwa/20010101/20010101052320.jpg)
右端は藤次郎さんが出したもので、他よりもやや鞘翅が青っぽかった。
道に迷い、なぜか同じ山を二度も昇り降りした挙句に謎の広葉樹の樹皮下から見付けたもので、こういう時は妙に嬉しいものである。
![イメージ 3](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/w/weapon-shouwa/20010101/20010101052300.jpg)
いつもより北で、割と考え無しに迷い込んだ森の端でスギから出たもの。
ここらで出るものの鞘翅は明るくて温かみのある色をしている事が多い。
大きく太って、緑の地に金色の射し方が渋い個体。
![イメージ 4](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/w/weapon-shouwa/20010101/20010101052310.jpg)
同じ場所の個体を少し。
やはり鞘翅の根元から金色の縁取りが伸びているものが多い。
キタカブリはマイマイカブリの中でも原始的な形質を残していると言う。
![イメージ 6](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/w/weapon-shouwa/20010101/20010101052330.jpg)
まだ箱に入らない分、手近で乾燥中のキタカブリから色味の目立つものをちょっと整列。
それ以西は(もちろん以南も)亜種間の移行帯を経てコアオマイマイカブリに遷移しており、「北寄りだから」 「緑色っぽいから」 というだけで即キタカブリであるとは言えない。
移行帯が迫った地域だからか、こうして見るとやはり宮城県のキタカブリはバラエティに富んでいると思う。
本亜種の特色である鞘翅のグリーンが一番目立つし色味にも差が見えるが、頭胸部の紫~赤~桃色の変化も見逃せない。
これが極端になると、藤次郎さんが出した青や私の金色といった色変わりの個体も出てくるので、一頭ごとに全く油断ならない虫だと言うしかないだろう。
魅惑的なこの色、出来る事なら野において撮りたいと思うのは私だけではないはず。
カメラの重さに文句は言わない。
だから頼む、出掛ける日に雨雪の少なからん事を…。
2012年 2~3月 宮城県。