暖簾分け~引退か

 
 
 藤次郎さん・K太君の二人と、マイマイカブリを見に前回出掛けたのは北。
 散々苦労した挙句、藤次郎さんが青いキタカブリを採った。
 
 それでは今度は南へ行こうと、最近私が見ている阿武隈川の左岸へ。
 
 
 結論を急ぐと、私は採れなかった。 私は。
 単独で深入りする日と条件違うしさ、などと言い訳しつつ崖から外道のオサムシをほじくっていると、そこへ藤次郎さんが道沿いから登ってくる。
 「 いやあ、全然出ませんねえ 」
 などと案内者の私が焦りながら半笑いで呼び掛けると、彼が応えて
 「 いたいた、下の方いたよ 」
 と事も無げに、採れたてのマイマイカブリを見せてくれる。
 
 
 
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                  画像のマイマイカブリは全て藤次郎さん採集。
 
 
 
 藤次郎さんは水棲生物に強い人だが、もともと生物全般に広く通じていて、虫を探すのも昔から。
 ちょっとコツを伝えるとこの通り、初めて訪れた場所でもきっちりマイマイカブリを抑えて来てしまう。
 
 私としては 「 良き生徒を得た。 」 と呟きつつ、あとは引退会見でもやるか、ぐらいの気持ちである。
 
 
 
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 前回もそうだったが、上翅にうっすら緑色が出た個体も稀に混じる。
 
 藤次郎さんは 「 採れたけど、見た事あるような紫色ばかりで。 」 と仰っていたが、実はそうでもないのだ。
 仙台の市街地、近所で採れたものと改めて比較してみると…
 
 
 
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 一枚目の画像、藤次郎さんの採集個体のうち三頭を残し、左に先月29日に採れた仙台市街の個体を二頭、右端には今回と同じ阿武隈川左岸で元旦に採れた青い個体を並べてみた。
 私達の近隣で出る色相の南半分を、乱暴に示した感じになる。
 
 私も阿武隈川の向こうで採れた紫色の個体を一見した時は 「 近所と同じ紫色だな。 」 としか思わなかったが、それを持ち帰って仙台市内の近所で採れた個体と比べ、意外と色味の差が大きいと感じた。
 
 簡単に言葉にすれば同じ紫でも、 「パープル」 と 「バイオレット」。
 仙台市産は赤紫で、阿武隈川あたりでは葡萄色と、数10km南下するだけで確実に青みは増している。
 
 本当は右端のような青い個体を藤次郎さんとK太君に見せたかったが、この場所では体色の出現率にバラつきがあり、今回は残念ながら当たらなかった。
 
 彼らは 「まだまだ」 と謙遜するのだが、既に冬季採集の眼も腕も出来上がって来ており、優れたセンスを備えているのがわかる。
 私が彼らに頭を下げ、県内各所のマイマイカブリを採ってきてくれるのを炬燵で待つようになる日も近いだろう。
 
 
 
                                             2012年 1月14日  宮城県