ルリカブリ
先日は藤次郎さん・K太君の二人と採集へ。
宮城のマイマイカブリは北が赤緑のツートン、南は青だけど…と水を向けると、K太君は 「北」 を選択。
キタカブリである。
結果から述べると採集数としては寂しいもので、最近のオサ堀が割と豊果続きだった事を考えると
「まあ、こういう事も一度くらいあって良いだろう…。」
と早い段階から言い訳を始めたくなったり、降り出した雪に悪態をついたり。
それでも藤次郎さんは夥しい廃ホダを調べ尽くし、ついに素晴らしい獲物を出してくれた。
「 いたー! 」
と声をあげた藤次郎さんが
「 ほんとに首まで全部緑色だねえ。 」
と続けるので、私は聞き返す。
「 ふつうキタカブリは赤紫と緑のツートンですよ? 」
「 いや、でも全身緑色して見えるけどなあ… 」
私がカメラを抱えて近付き、藤次郎さんが割った材の横腹に開いた越冬窩を覗き込むと、
![イメージ 1](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/w/weapon-shouwa/20010101/20010101053850.jpg)
中には確かに青緑色のマイマイカブリが脚を縮めて入っていた。
通常のキタカブリとは違う色。
いつものように越冬窩中の湿度で体表が濡れており、最初はそのせいで紫色が青く見えているのだろうと思っていたのだが、しばらく待ってみても青味は褪めるばかりか徐々に強くなっていくようだった。
持ち帰って詳しく見てみる事に。
![イメージ 2](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/w/weapon-shouwa/20010101/20010101053900.jpg)
体表が乾き、本来の色が現れた。
綺麗なオス。
上翅色はキタカブリの中でも明るい部類の緑色で異常無いが、この頭胸部の鮮やかなコバルトブルーは珍しい。
以前Saitouさんに見せて頂いたマイマイカブリの標本箱の中には、やはりこうした明るい青色の出た個体が入っていた。
少数ながらキタカブリの中にも青色は出るらしい。
![イメージ 3](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/w/weapon-shouwa/20010101/20010101053910.jpg)
この青は天然のコバルト焼成とでも言いたい。
胸部を拡大してみると、青色の中に紫の部分が取り残されたように散っている。
小楯板の中にも二色が入り混じっているようだ。
上翅の会合線が完全に閉鎖していないのも、異常性の一面を見るようで面白い。
![イメージ 4](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/w/weapon-shouwa/20010101/20010101053920.jpg)
上翅の緑色の中にも、頭胸部の青い色が星になって飛び込んでいて美しい。
こうした頭胸部色の飛び火は色付きのマイマイカブリによく見られるが、この個体のように変わった色をしている場合は、二頭の半身をつなぎ合わせて作ったものでない事の証明にもなる。
![イメージ 5](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/w/weapon-shouwa/20010101/20010101053930.jpg)
他のオスとの比較。
右端が通常のキタカブリ。
頭胸部が赤紫で、上翅が緑色。
右から二頭目は今回の個体。
三頭目が前回同じ場所で採れたもので、これも色変わり。
画像では頭胸部が橙金色に見えているが、実際はもう少し金緑色寄りに強く輝いて見える。
左端は仙台市内、近所の個体。
右三頭のキタカブリとの比較用に並べてみた。
素晴らしい変異個体を見る事が出来て、私は嬉しい。
嬉しいが、この日の最初に藤次郎さんとK太君の二人には
「 青いマイマイカブリは南で… 」
と説明したのに、北に来て青が出たので困った。
次に 「青い奴を見に行こう。」 と南に行くと、また予期せぬ色が飛び出して来そうで少し怖い。
2011年 12月 宮城県。