ご町内カブリ

 今年も秋までクワガタを追いかけながら当博物誌の記事を復旧し、いつの間にか冬。
 越冬中のオサムシマイマイカブリを探すシーズンとなった。
 
 今期も方々で採掘し、北上川あたりから鞘翅が緑色を帯びるキタカブリが出てくるという大体の傾向は体感できた。
 全国のマイマイカブリの中でも最美麗と謳われるキタカブリだが、産地で採っていると同じような緑色ばかり出てきて少々退屈でもある。
 
 ふと自宅の裏山のような場所にマイマイカブリはいないのか、いるならどのような色形をしているのかというような事が気になった。
 最近自宅のマンションが大掛かりな震災の補修で騒がしい事もあり、ちょっとした時間を見てごく近所でマイマイカブリを探してみる事にした。
 
 最初は斜面に出来た段差に植物の根などが絡んだような所を掘ってみたが、すぐに虫には当たらない。
 やがて目ぼしい場所を掘り尽くして少し低い場所へ下りていくと、
 
 
 
 
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 アキタクロナガオサムシが出た。
 もしかしたらここにマイマイカブリはいないのでは と思っていたが、これが出るならもう少し探してみようという気になる。
 
 少し場所を移すと、良い具合に根っこごと倒れた木がある。
 まず根の周りに固まった土を掘り進むと、
 
 
 
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 ボロッと土が崩れた所に穴が開き、中に脚の長い虫の姿が。
 小さかったのでまたアキタクロナガかと思ったが、これはマイマイカブリだ。
 
 鞘翅に綺麗な色が出ているのには驚いた。
 
 
 
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 北上川とか江合川あたりで撮った写真が混じったわけではない。
 ご近所で色付きカブリが…?
 私は少し悩んだ。
 
 その後も追加個体が得られたが、とりあえず特徴的だったこの一頭目をもう少し詳しく見ておこう。
 
 
 
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 一週間ほどで少し形が整った所。
 
 全くの緑色というより少し青に寄った鞘翅の色。
 体長は31.5mmほどと小さいオス。
 
 
 
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 右は鳴瀬川江合川といったキタカブリ境界あたりの個体で、左が今回の個体。
 
 並べてみると、今回の個体はいわゆるキタカブリ色ともちょっと違う色調に思える。
 もちろん仙台あたりで出るキタカブリ寄りの個体の中でも色合いに差はあるが、これがご町内から出るとなるとちょっと待ってくれと言いたくなる。
 
 
 
 
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 ではこの場所で出る個体がみんな青緑かというと、それも違う。
 これは同じ倒木の皮を剥いで二頭目に出たメスだが、鞘翅は紫色を帯びていた。
 
 体長は43mmほどで、一頭目の小さなオスを見た後だったから、出てきた時にはもっと大きく感じた。
 後の記事でもう少し詳しく触れようと思う。
 
 
 
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 同じ場所から出た追加個体。
 一頭目ほど青いものは出なかったが、左の個体などは良く見ると色が出始めているようで、胸部はスペードのような妙な形。
 右のメスの頭胸部の色は薄く、桜の花のような色。
 
 街の中でポツンと取り残された集団の中で、こうした小さな特徴が徐々に尖っていったら面白そうだなどと思う。
 それもキタカブリ⇔コアオマイマイカブリの混じりかけた仙台辺りでは尚更で、両者の因子の頻度も一様ではなく、キタカブリの要素が思ったより南に飛んで残っている所もあるのではないかと思った。
 
 近所の虫が面白いと、気が休まらないようでやや困る。
 
 
 
                                               2011年 初冬  仙台市