島の虫を調べるという事

島の虫を調べるという事
2011/4/25(月) 午後 6:19
 
   
 ここの所 ネコの写真ばかり載せているが、田代島へ渡るそもそもの目的はマイマイカブリ等の大型オサムシの調査である。
 
 最近はネコ関連のタイトルづてに来て下さる方もいらっしゃるようで、田代島にはマイマイカブリが… と説明を加えようとするのだが、越冬昆虫の雄たるマイマイカブリも 世間一般にはマイナーな存在と言わざる得ないようで、
 「 そのナントカカジリって何ですか? 」
 といった反応が多い。
 
 ネコとムシとでは その愛好人口に膨大な差があるのだから無理もない。
 この機会に マイマイカブリに関して軽く浚っておこう。
 
 マイマイカブリとは大型オサムシの一種で、その名はマイマイ = カタツムリ の殻に長い首を突き入れて主食とする姿に由来する。
 ほぼ日本特産種ではあるが 国内での分布は広く、北海道・千島から周辺離島を含む九州まで。
 
 地上を徘徊して餌を探し、後羽が退化しており飛ぶ事が出来ない。
 このため大きな河川や山脈などを行き来する事が出来ずに遺伝的隔離が生じやすく、特に離島に於いてその傾向が強い。
 
 例えば…
 
 
 
 
イメージ 1

 
 どちらも同じ宮城県の個体だが、ずいぶん体色が違う。
 これは上記の通り 数万年単位での隔離でそれぞれが独自の分化を遂げた事が原因しており、両タイプの分布境界にあたる宮城県では 隣町に移るだけでもこれだけ違いが現れる。
 
 こうした宮城県内の分布境界が海上に延びた所 仙台湾の端に浮かんでいるのが、田代島や網地島といった島々。
 これらの離島に生息するマイマイカブリがどのような色形を備えているかを調べる事により、虫自体の研究資料に留まらず 元々は地続きだった各島が本土から離れた年代や、さらに日本列島の成立過程をするための重要な材料を得る事が出来る。
 そういう意味でも 田代島は非常に興味深いポイントだ。
 
 
 
 
 
 
イメージ 2
 
                             ( 画像右下のアイコンで拡大可能…苦手な方はご容赦 )
 
 
 
 
 またマイマイカブリは崖の土や朽木に潜り込んで越冬するので、気温が上昇し越冬態勢を解除する4月下旬までの調査が重要、という訳である。
 
 
 こちらは先日 原発の事故で全村退避の対象となった飯舘村で見たマイマイカブリ
 頭胸部が美しい青色を呈する。
 
 震災後、カワラハンミョウやヒヌマイトトンボの生息地は 壊滅的な打撃を受けているという話を聞いた。
 マイマイカブリに関しては全滅 という事までは無いに違いないが、それでも離島のような限定された産地に津波が…となると気掛かりである。
 
 来月以降の田代島では、カミキリムシやアオスジアゲハなどと同時に、トラップなどでマイマイカブリの様子も見ておきたいと考えている。
 
 
                                飯舘村マイマイカブリは  2011年4月6日 撮影。
 
 
 
 旧ブログより↓
 
日本特産だったんですね。
どれも綺麗ですね。
2011/4/25(月) 午後 9:32 ひさ@くわがた
 
 
日本は島国なので、昆虫に限らず動植物の分布や変異は面白いカテゴリになりますね^^
しかも南から西から北から、というような多方面からの進出経路が考えられたり。
陸、海、空。どんな手段で入ってきたのか?とか。
誰もその現場を見たわけでもないのに、現代の状況から推考することができる愉しみ♪
ロマンですなぁ^^
2011/4/25(月) 午後 11:25 gibachinamazu
 
 
なるほどぉ。どうも虫は苦手で。。。22年もねこちゃんと暮らすと家の中には絶対虫が入り込まず。。。ほっとしてましてた。いやいや申し訳ありません(._.)_
原発の影響で沢山の宝が消えてしまうんですね(;_;)人間のエゴそのもので情けない。
こうやっていろんなことを知れて、とてもありがたいです。
やっぱり田代島に一度は絶対に行きたいなあ。
人も動物も自然も共存してる素晴らしいところ実感したいなあ。
落ち着いてきたら、ぜひ一度伺いたい島です。
知らないことを知ることはとても向上できるし、やっぱり楽しい。またおじゃまします。
今日は20キロ圏内の動物達の話を聞いたり映像をみました。なんと言えばいいのか。。。命あるものはみんな同じだし、人間が偉いわけじゃない。悲しい現実になんとも言えないやりきれない気持ちです。
2011/4/26(火) 午前 8:09[ hanacoco ]
 
 
ひささん、こんばんは。
ブリモドキなんかは国外にも分布していますが、「マイマイカブリ」となると日本特産と言って良いでしょうね。
(カタツムリ駆除のために台湾へ移入されたものが、一部定着しているという話も聞きますが)
対馬マイマイカブリとカブリモドキが共存し、クワガタも面白いので行ってみたいですね。
2011/4/27(水) 午後 9:30 weaponshouwa
 
 
義蜂さん、こんばんは。
やはり羽根で飛べず移動力の小さな種は、変異の境界が鮮明で調べ甲斐がありますね。
オサムシはその最たるもの。
私としては、ミヤマクワガタにも遺伝的ギャップが残っていると思うんですよね。
列島南北から複数回の移入があったんじゃないかなあ。
北海道とか西日本のバケモノみたいな連中と、我々のご近所の慎ましやかなミヤマじゃ サイズにして平均5mmは違うし。
何より各地域で多数の個体を見て来て、明らかに顔・プロポーションの印象が別物。
あれでマイマイカブリ並みに色でも違ってれば、話ははっきりするんでしょうけど…。
2011/4/27(水) 午後 9:59 weaponshouwa
 
 
hanacocoさん、こんばんは。
虫入らずの御邸には、優秀な守護者がついているという事なんですねえ。
昆虫は3億年以上の歴史を持っていますから、本来津波が来たくらいで絶滅したりはしないはずなんですけどね。
今は生息域が開発で細切れにされてしまっているので、個体数の減少を回復できずに絶えてしまう集団が多いようです。
放射能の影響に関しては、まだ何とも…。
昆虫は比較的放射線には強いんですが、原発周辺で長期に渡って影響を観察した資料自体がほとんど無いだろうし。
緊急性で言えば 心配なのはやはり動物達かな。
街の中を牛が彷徨ってビニール袋食ったり、イヌの死骸が折り重なっているのは見るに堪えませんね…。
2011/4/27(水) 午後 10:25 weaponshouwa