九月尽に赤光射す

九月尽に赤光射す
2010/10/1(金) 午後 9:59
   
 
 これは9月29日、最初に見つけたアカアシクワガタ。
 前の記事に載せたものと同一個体。
 
 
 
 
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 発見時刻は11:32。
 朝が涼しすぎて気温の上昇が遅れたため、昼頃になってようやくヤナギの根元から這い出し、幹を登り始めたという雰囲気。
 
 この枝の下、目の高さくらいで見つけたが、みるみるうちに幹を登って行ってしまう。
 やたらと胴体が太って見えたので、最初は大きなヒメオオだと思っていた。
 
 生態写真などでも、アカアシが枝先をかじっている所はよく見るが、幹を登っている所は初めて見たように思う。
 
 
 
 
 
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 枝の付け根を乗り越え、素早い脚運びで登る。
 
 左上翅に奇妙な傷が付いているが、内側にしまわれている後翅は無傷のように見える。
 羽化直後、上翅が伸び切ってから硬化するまでの間に蛹室が崩れたりしたのだろうか。
 
 手に取ると、重い。
 「 このケツでアカアシ… デカくねえか!? 」
 と色めき立ったが、車に戻ってスケールで測ってみると、意外にも45mmほどしかない。
 
 「 あれ? 」
 と拍子抜けしたが、平地ばかり歩く私にとってアカアシは馴染みの薄い種類。
 まともな大歯の個体となると目にする機会もごく稀なので、この個体が大きく見えてしまったのだろう、と勝手に解釈。
 
 この後に採れたヒメオオ・アカアシのサイズはどれもこの個体を超えず、サイズは不満だけど数が採れたから良いかあ、と引き揚げた。
 
 
 しかし、よくよく思い返してみれば、この時採れたヒメオオ達も決して小さくはなく、大きいものには50mm台の感触があった。
 それが45mmのアカアシより小さい訳はない。
 
 
 
 
 
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 こうして採れた虫をわざわざ並べて撮った時にも気付くべきで、後で見直すとアカアシのサイズが異常なのは一目瞭然。
 
 山で一日カメラを振り回して疲れていたため、違和感どまりで間違いには気付かなかった、と言い訳しておくしかないだろう。
 
 
 
 
 
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 家に戻って一息つき、山で使ったカメラなどをカバンから出していると、間に合わせに持っていったスケールが目に付いた。
 よく見ると、目盛りのスタートが10mm。
 
 待てよ… と、ここでようやく気が付いた。
 
 
 
 
 
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 1cm測り違っていたのだ。
 実際のサイズは55mm。
 
 最初に測り違えたこのアカアシを基準にしたため、その後のヒメオオまで小さいと思い込んでいたが、とんでもない勘違いである。
  
 
 
 思えば、ヒメオオにしても私が初めて採った日の2頭目がいきなり55mmで、宮城県にも大きな個体がいるのかと仰天したものだった。
 アカアシも52mmほどが県内の限界サイズだろうと決めて掛かっていたため、この個体を測りなおし、アゴ先が指した目盛りを見た時には目を疑った。
 
 今年のミヤマがどれも70mmどまりだったので、山の神みたいなものがアカアシで補填してくれたのではないか。
 
 
 
 
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 ただ、闇雲に奥地に入ったり標高を上げたりしても、個体数は稼げるがサイズが伸びるとは限らない。
 たくさん採れても大概はこうした小さいアカアシばかり。
 
 宮城県内での過去の記録をみても、50mmを超える大型個体が出る場所は特定の狭い場所に限定されるようで、これが何に原因するのか不思議で仕方がない。
 
 
 
 
 
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 大きなアカアシのアゴは、先端に集まった内歯が複雑に入り組む。
 第一内歯の少し先に出る奇妙な分岐には、今回初めて気が付いた。
 
 樹液を得るためにヤナギをかじる時、ヒメオオの太く湾曲したアゴがニッパーのように樹皮を裂くのに対し、アカアシはこの細かい歯で枝を擦って傷を付けているように思う。
 ヒメオオよりもアカアシの方が高い位置、枝先近くにいる事が多いような気がするのはこのためかも知れないとも思うがどうだろう。
 
 
 
 
 
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 宮城県産のクワガタ、それも大型個体の顔を見比べてみようと思った時に、アカアシクワガタは最後まで穴になるだろうと考えていた。
 
 ただでも縁の薄い種類であり、他所で話を聞くような大きな個体は出ないんじゃないかと思っていたので、今回こいつが目の前のヤナギを登っていてくれて本当に良かった。
 
 この日の気温の上昇を遅らせた微妙な天候にも、当然連れて行ってくれたSuさんにも感謝しなければならない。
 
 こういう事があると、漢字で 「有り難い」 と書く意味がよくわかる。
 
 
 
                                               2010年9月29日   宮城県。 
 
 
 
 旧ブログより↓
 
デカイですね。
ヒメオオも52ですか?
私もやっと50を越えたばかりなのに、簡単に越えるので、凄すぎますね。
2010/10/1(金) 午後 10:28 ひさ@くわがた
 
 
オオの75mmくらいに相当するんでないですか?自分も昨年54mm採りましたが柳にミヤマがついていると思い採集しました。内歯が
アラガールホソアカのスーパー大歯みたいに枝別れしますよね~。翅だけ残念です。
2010/10/1(金) 午後 10:37 ひろっけ
 
 
すごい記録ラッシュですね。千葉にはヒメオオもアカアシもいないのでとても残念。来年は宮城のヒメオオ狙おっかな(^^)>
2010/10/1(金) 午後 11:41 ふじたいら
 
 
こんばんは^^ 元義蜂です(笑)
前回記事を読みつつ、画像を見て45mmにしちゃ体格エエなぁと思ってました。
55mmとは滅多にお目にかかれないです。
翅の傷は、野外脱出後の傷ではないように見えますね。
羽化直後に、蛹室内の突起か何かが引っかかって穴開いたような感じ。
体格が大きい故、羽化後うつ伏せになれなかったのかな。
それでも地元の記録的な個体としては価値ある一頭じゃないかな^^
ちなみに貰って来たヒメオオは、当時は目視42mm扱いだったの?^^;
こちらも体格が違いますがな…。
2010/10/2(土) 午前 0:09[ Sakazuki ]
 
 
おぉ、立派なクワガタ達ですね。
実は、アカアシもヒメオオも実物を見たことがありません。
特に脚の綺麗なアカアシには一度お目にかかりたいです。
2010/10/2(土) 午前 0:11[ Dobo ]
 
 
ひささん、さらにこんばんは。
県内の限界は50mmちょいくらいで、デカいアカアシは出ないだろうと決め付けていたので本当に驚きました。
ヒメオオにしても、前に55mmの最大個体が出た林道には工事で入れていないのに毎度52mmいってるし、この一帯のアベレージがデカいんでしょうね。
幹のど真ん中とか、しゃがむくらい低い位置とか、大きな個体って意外に変わった所で見つけることが多いようにも思います。
2010/10/2(土) 午後 8:34 weaponshouwa
 
 
ひろっけさん、こんばんは。
東北のアカアシって、数は採れるもののサイズが出づらいと聞きますけど、山形・宮城あたりでもいる所にはいるんですね。
仰るように、大内歯に小歯が乗る大型個体のアゴはアラガールじみて見えます。
拡大してみると、大内歯の付け根からアゴ先端に向けてちょっと波状の突起が出ていて驚きました。
大傷はありますが、野外から得た物の証と思っています。
2010/10/2(土) 午後 9:39 weaponshouwa
 
 
ふじたいらさん、こんばんは。
千葉県で標高を稼ごうと思っても、高い山ってあまり無いんでしたよね。
アカアシならと思うけど、地元で採ってる方が難しいと言うからには難しいんでしょうね。
宮城の我々からすると、平地の採集でヒラタを採れるのが羨ましかったりします。
2010/10/2(土) 午後 10:28 weaponshouwa
 
 
返信ありがとさんです。アカアシ、ヒメオオは難しいというよりは生息が確認されていないんです。なんせ千葉は日本一クワガタがいない県ですから・・・。
いるのは、コ、オオ、ヒラタ、ノコ、ミヤマ、スジ、ネブトの7種のみ。。。
昔、昆虫園の手伝いをしていた時に宮城の方が来て、昔ヒラタを採った事があると言っていました。たしか川沿いで採集したと言っていたかな・・・
2010/10/2(土) 午後 11:15 ふじたいら
 
 
Sakazukiさん=義蜂さん、こんばんは。
上翅の傷、あまり見た事無いような感じなんですよね。
大小の貫通創が並んでいて、溶けた金属が床にこぼれたような感じに見えます。
鳥が突付いたりミヤマがかじったりしてあいた穴にしては、どこか塞がりかけたような印象だし。
羽根一枚としてのシルエットは完成しているので、やはり羽化直後に何らかのアクシデントによって傷付いたんでしょうね。
個人的に野外個体の傷にはドキュメント性を感じたりもします。
45mm以下ならどれでも同じようなもんだろう考えていたヒメオオも、実は軒並みデカかったんですよね。
思い込みというものは恐い…。
2010/10/2(土) 午後 11:39 weaponshouwa
 
 
角が長くてかっこいいですね
2010/10/3(日) 午前 0:17[ かおる ]
 
 
Doboさん、こんばんは。
台湾にも本土のものより大きなヤマダアカアシがいると聞くんですが、肝心の脚は黒いんですよね…。
ツヤの感じなんかは一緒で、十分に格好良い種類だとは思います。
台湾はタカサゴミヤマが異常にデカくて85mmくらいいくと言うし、今年の8月には88mmが出たとも聞いてます。
ヨーロッパミヤマじゃないんだから勘弁して欲しいよなあ…。
2010/10/3(日) 午前 0:23 weaponshouwa
 
 
カオルさん、おはようございます。
大型アカアシのアゴは直線的で、全長に対して歯の無い部分の占める割合も長いため、余計に長めの印象が強まって見えるかもしれませんね。
たまに採れても小さい物が多く、こうしてアゴのよく伸びた大型個体が見れて驚きました。
2010/10/3(日) 午前 7:07 weaponshouwa
 
 
おぉ! 東北地方にもこんな巨大なアカアシがいるとは... 上翅のキズがこの個体をいっそう迫力あるものにしていますね~ 大型アカアシのアゴはたしかに直線的で内歯がアゴ先に集中してますよね~ 内歯の間隔が広いのでまだまだ大きくなる可能性を秘めているように思います。ポチ☆
2010/10/15(金) 午後 8:43 ハル
 
 
ハルさん、こんばんは。
東北だとアベレージも大した事無くて、桧枝岐なんかで数採ってどうにか大きいものを選ぶしかないと思っていて。
宮城県では52mmくらいでストップするんじゃないかと決め込んでいたので驚きましたね。
地元産のサイズに対して諦めずに済む、という意味で大きな収穫でした。
傷の由来が不思議なんですよねえ。
2010/10/16(土) 午後 10:48 weaponshouwa