お隣は豊饒なり 山形
山形と宮城は、全国的に見れば東北で隣り合ったご近所 という事になる。
お隣なら見られる虫も大体同じようなものだろう と言いたくなるが、これが違うのである。
宮城で虫をやっている私から見る 「 隣県山形 」 というものは一種のユートピアで、どの類の虫をとっても向こう様のラインナップが一級以上魅力的だし、それぞれの個体数も段違いに豊かで、昔から羨ましくて仕方が無いのだ。
少し前、ひささんから
「 ひろっけさんって知ってる? 」
と尋ねられた。
ひろっけさんといったら、私が旧ブログの最初期からお世話になっていた、山形の方だ。
彼らが運営する 「 Y-KUWA 」 の例会に、ひささんと一緒に私もお誘い下さっているというので、惧れながら末席を汚させて頂く事に。
それで先5日に山形の西川町まで、ひささんの後に従ったという訳だ。
月山銘水館に集まっていたY-KUWAの皆さんにご挨拶もそこそこ、見せて頂く虫にしても伺うお話にしても扇情的過ぎて、私は少し熱が出るくらい興奮した。
テレビが来て撮った分も放送前だし、カメラを振り回す余裕もそれほど無かったので多くは伝えきれないが、幾らかをここで。
![イメージ 1](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/w/weapon-shouwa/20010101/20010101002250.jpg)
照らした山が黒いダイヤを投げてよこす山形。
今夏飛来したこの大粒の黒ダイヤは、縦径73.5mmである。
この尤物を手にした方は、同じY-KUWAのCKCさんに誘われ当日お二人でライトをやっていたそうで、CKCさんのライトに60mmのオスが来て大喜びした一時間後、自分のライトにこれが来て驚いたという。
それはそうだろう。
CKCさんが
「 いやあ、何か拾って大騒ぎしているのは見えたんだけど、発電機がうるさくて何言ってるか全然聞こえなくて。 」
「 それで走って来たら、こんなもの持ってるから、『 こいつ、俺の隣でとんでもないものを 』って… 」
という話をしてくれた。
さらに 「 この人、初めて採ったオオクワガタのオスがこれだからね! 」
という聞きたくないような事も教えてくれるので、私は唸るしかない。
ライト兄弟が試験飛行で月まで行くようなものじゃないか…。
これには、オオクワガタにほとんど興味の向かなかった私でも、
「 俺も発電機買おうかな… 」 と呟かずにはいられない。
また、CKCさんが
「 変わったカミキリが採れて… 」
と、その標本を見せてくれた。
テレビカメラの前に割り込めずに写真を撮りそびれたが、ゴマダラやヨコヤマヒゲナガに似て、いずれとも違う見慣れないカミキリ。
![イメージ 2](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/w/weapon-shouwa/20010101/20010101002300.jpg)
私の見立てではこの図版の種が近いように思うのだが、じっくり眺められたわけではないので確証は無い。
何しろむし社で見てもらっても正体不明とされたという。
CKCさんが来シーズンあたり追加個体を出し、新種記載してくれるかも知れない。
![イメージ 3](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/w/weapon-shouwa/20010101/20010101002310.jpg)
ひろっけさんから有難い頂きもの。
山形のヒメオオクワガタペアだ。
今年51mmまでしか採れなかった私の目には、この53mmの個体は非常に大きい。
左右前方に張った胸部の幅が特に目立ち、頭部には大型個体特有の逆ハの字型の隆起が見られる(画像では確認しづらいか)。
というひろっけさんの記事を垂涎ながらに読んだ私は、その実物として 単純な大型個体以上の価値を感じる。
さらに、
「 近所のですけど、これも良かったら。」
と頂いた(そう、頂きっぱなしである)小さな箱に入っていたのは、輝く虫。
![イメージ 4](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/w/weapon-shouwa/20010101/20010101002320.jpg)
ユキグニコルリクワガタ。
それもタイプロカリティ。ユキグニコルリとして記載された其産地の個体である。
小さくて綺麗な虫は、大写しのし甲斐がある。
5個体も頂いてしまったので、もう一つ。
![イメージ 5](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/w/weapon-shouwa/20010101/20010101002330.jpg)
本家ユキグニコルリの輝き。
小さくともクワガタだけあり、サイズによって前胸端の尖り方など少しずつ違ってくるようだ。
これが近所で採れるというのだから、全く山形って所は…。
春にはギフチョウだって飛ぶのだから、自分が山形に住んでいたら体が二つあっても足りないだろう。
そうして山形の虫相・地勢的なハイスペックぶりを見せ付けられ、
ひささんと二人
「 いいね、山形… 」
「 山形いいねえ… 」
などと、ほとんど同じ事ばかり呟きながら帰ってきた次第。
山形の良さは知っていたつもりだったが、その土地で同じものを追い掛けている方々のお話を直接伺うと、まだ全然見足りていないと思わされる。
ひろっけさん、CKCさんをはじめ、とても有意義な機会をお与え下さったY-KUWAの皆様、またお声掛け頂いたひささん、この度は誠にありがとうございました。
我らが宮城県でも何か良い虫とエピソードを揃え、次の機会に備えなくては…。
2011年 11月5日 山形県。