紅葉 黒虫
前にも少し触れていたが、義蜂さん = Gibachinamazuさん にお誘い頂き、10月13日に山を見てきた。
目当てはヒメオオクワガタ。
義蜂さんは普段からジムニーで悪路をどこまでも征服し、道が潰れていれば重たいカメラを担いで何キロでも歩いて写真を撮ってくる。
そうして昨年・今年と、仙台市内の複数箇所でヒメオオクワガタを確認したという話を聞いていた。
有名産地のように多産したり、50mmを大きく越えるような特大個体の記録があったりする訳ではないのだが、そこは我らが仙台市。
同じ虫ならば、仙台市境の囲みから1mでも内側で採れたものに有難みを感じてしまうのが同市民というものである。
連れて行ってもらった場所は意外もいいところ、街からそれほど遠くない場所からジムニーは山道に入る。
とはいえ、10月半ばともなれば山は秋の錦。
二人のどちらとも無く、
「 いや、やっぱりクワガタはちょっと、来年の下見というか… 」
というような事を、半笑いで呟いたり。
燃える山に敗色を見ながら林道を行き来して、午後遅くなった頃。
勢いを失いかけた黄色い葉のヤナギが集まった場所。
「 この辺りにいても良さそうだけど。」
「 もう遅いしねえ… 」
という感じで休憩中、義蜂さんが
「 あれ何だ、クワガタ? …じゃないだろうけどカメラ持って来よう。 」
などと言い出す。
「 あの左に出た枝に 」
と言われても私には見えないのだが、義蜂さんが望遠で撮った画像を見せてもらうと、確かに脚の生えた黒い影。
下草と低い枝が多くて入りづらい場所だったが、せっかく見つけたものだし捕まえてみようと義蜂さんが網と竿を持って奥へ。
ややあってようやく私にも大きなヒメオオの姿が確認できたが、
「 この辺りだな 」
と義蜂さんが伸ばす竿の位置には、私が見付けたのとは別のヒメオオクワガタがついていた。
「 もっと上にもいるよ 」
「 上…? ああ、こっちの方が大きいな… 」
などと言いながら、義蜂さんが首尾よく両個体共に網に入れた。
義蜂さんのカメラ、網と、ここで採れた二頭のヒメオオクワガタ。
大きな方で49.5mmほどあり、よく太った個体。
昨年ここでヒメオオクワガタの生息を確認した時には40mm代前半までのサイズしか見られなかったというので、大型個体が見られた事は収穫。
「 まだいるんだねえ 」
「 見ちゃうと欲が出るな… 」
と、俄かに前のめりになってヤナギの集まった場所に眼を飛ばすが、またしばらく虫影見えず。
山道をずっと下り、またちょっと車を降りて
「 この木には去年メスが付いてたんだよな 」
と義蜂さんが示す一帯のヤナギをチェックしてみる。
そうはいっても時刻は既に16時をまわり、涼しいというより明確に寒い。
まあ大型含めて2頭も見られて良かったじゃないか、とその場を引き揚げ掛けた時、視界のギリギリ右側に何か違和感がある。
確かに何か見たがどこだっけ…
などと、数歩戻ってそこのヤナギの木を見直すと、驚いた事に目の高さほどを登っていくヒメオオクワガタのシルエットがあった。
「 いた!登ってる! 」
という私の簡単すぎる報告で義蜂さんが戻ってきて、木の真下に入り竿を伸ばし始めた。
もう薄暗く、カメラを持った手の指が冷たく感じるくらい寒いと言うのに、この個体は今から根際を抜け出して幹を登っている。
もっと早い時間に枝齧りでもなんでもすれば良さそうなもので、不可解だ。
足早に幹から枝に移ったこの個体を見上げていると、さらに高い枝の影にもう一個体を確認。
撮ってやりたかったが、カメラに着いていたレンズは魚眼。
暗い野外で高所の虫は撮れない( 義蜂さんはきっちり望遠で抑えていた )。
「 もっと右、そう上… あッ葉っぱに引っ掛かった! 」
などと騒ぎながら、この2頭とも義蜂さんが網に入れた。
最初に登っていく所を見た個体の方が大きい。
「 50mmいくかな? 」
と義蜂さんが言うが、私は今年50mmほどの個体ばかり毎度毎度見ているのでわかる。これは50mmちょいある。
義蜂さんが測ってみると50.8mmで、ここで確認できたものとしては最大個体だ。
何か丸々としてオオクワガタみたいだな、というのが第一印象。
49mmの個体と較べても頭胸部がパンパンに張って、実差の1mm以上かなり大きめに感じる立派な個体。
「 仙台市産ヒメオオクワガタ 」 としては文句無いサイズだろう。
採集直後の付近の様子。
特に暗めに撮ったわけでもなく、こうして日が傾いた中をヒメオオクワガタが這い出してきたからこそ驚いた…のである。
もう11月の夜に行っても採れる気がして怖い…。