ヒメオオ 10月またぎ

 
 日暮れの早さに驚かされる時期となった。
 ほんの二週間ほど前まではヤナギの根元に汗滴を垂らし、クラクラしながらヒメオオ・アカアシクワガタを探していたものだが、今同じ山を訪れるとやや寒く感じるほどだ。
 
 この踏み台を蹴外したような気温の急降下によって、今年はもうクワガタなど残っておるまいと考え、そう考えつつもやはり行くだけは山に行ってみると、案外いる所にはいるもの。
 
 
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 9月の終わりで虫を探している人も自分一人だったからか、目立つ場所にも割合とヒメオオクワガタが付いていた。
 
 枝に新しい齧り痕をつけて、アリと一緒に吸汁している。
 
 
 
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 いつも谷側を見る道沿いで、敢えて反対の山側を眺めて歩くとここにもヒメオオの姿が。
 樹高2.5mほどの小さなヤナギの木についていた。
 
 体長は45mmほど。
 背中に他のオスに噛まれたような穴が開いていたので、周りを探してみたが見当たらず。
 
 
 
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 この日はどうも谷とは反対側がツいていたようで、他の道でも崖を登った所のヤナギから大きなオスを掴んだ。
 どちらかの腕で常に何かに掴まっていないと落ちる場所なので、なかなか生態写真に出来ないのが残念。
 遅い時期に大きな個体がついているのは、こんな所が多いような気がする。
 
 今年のお決まりと言うべきか、この個体も50.5mm。
 ここしばらくは、どうやっても52mmより大きなものには当たらない。
 
 
 
 10月になり、2日は寒かった。
 雨まじりの低温ではさすがの山クワガタたちも樹には登るまい と言いつつ、本当は絶対いるだろうと思いつつ出掛けると、山の上でヤナギの奥に捕虫網が揺れているのが見える。
 
 Sugawaraさんが(寒いのに)バイクで来ていたのだった。
 手にした網にはアカアシクワガタが入っている。
 
 9月の初めにSugawaraさんと来た時にはアカアシクワガタがたくさんついていたこの場所にも、今やオス一頭のみと寂しいもの。
 
 秋にクワガタを探す人は大概視力が良いものだが、このSugawaraさんも眼が鋭い人で、昨年は得体の知れないヤナギモドキのような樹についているヒメオオを一発で見つけ、今年などは
 「 赤い実のつく樹にヒメオオいたよ。 」
 と怖ろしげな事を言っていた。
 そもそも普通はそんな所を見ようと思わない。
 
 ツーリングがてら北上してみるというSugawaraさんと別れ、別のポイントを潰してみる事に。
 
 
 
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 パラパラと雨音だけが響く道沿いに、ヒメオオクワガタの姿。
 
 これで34mmと小さなものだが、揺すってもなかなか落ちなかった。
 脚が強いのか、凍えた脚が枝から離れなかったのか。
 
 
 
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 ずっと奥へ進むうちに、雨は続くものの日差しが差すように。
 暖かいとは言えないが、それでも幾らかヒメオオが見られた。
 
 やや高い位置で、体をくの字にして枝を齧るオス。
 
 
 
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 落としてみると、なにか丸々とした感じの個体。
 これも41mmと小さな個体。
 
 小さくとも、条件の厳しい日に見られたものは輝いて見える。
 
 
 
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 前述の大きなオスがいた樹を見ると、今度は大きなメスがついている。
 
 面倒な場所だが、見つけた以上行かねばならない。
 見づらい樹だからこそ、クワガタは採られず残っている。
 
 
 
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 乾いた土か、樹の繊維か、背中を茶色くした大きなメス。
 38mmほど。
 
 ヤナギの樹液を雨滴で割って飲んでいたようだ。
 
 
 
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 隣の樹からもう一頭。
 
 2年生きたものだろうか。
 アゴは先端が丸まり、体表も磨り減ってすっかり艶消しのキュウシュウヒメオオのようになってしまっている。
 これがさらに大きくて39mmある。
 
 今年はオスが50mmほどでストップしてしまう一方で、メスは普段に無く揃って大きく、先日は40.5mmほどの大型個体を見つけて標本にした。
 オオクワガタやヒラタクワガタを採らない私の眼に、40mmを超えるドルクスのメスは何か珍しく、異様に映るものである。
 
 
 今年はいつまでヒメオオクワガタが見られるだろう。
 11月 とまでは言わないし、山が封鎖されてしまえば仕様も無いが、上着を増やしてもう一週くらい見に行ってみようと考えている。
 
 
 
                       2011年 9月末~10月2日   宮城県