虎杖齧り
台風が来ているが、大丈夫。
ishiさんとヒメオオクワガタを見に行ってきた。
8:00頃はかなりの濃霧で、見通し10m以下という事もあった。
それでも低いヤナギについたものはさすがに目に付き、この個体は二人同時に発見。
大きなメスで、周りに少しずつかじり跡を付けていた。
すぐ一列奥の木は、霧でかすんでいる。
徐々に強まる雨の中を進むと、右手のこれもごく若いヤナギの幹が左右に膨らんでいるのが目に入った。
同時にishiさんが車を停め、「 これがクワガタじゃなかったら引退する 」 と言って寄って見ると、果たしてヒメオオの雌雄。
捕まえるだけなら、どれだけ高い所についていても揺らして落とすと言う最終手段を使えるけれど、カメラ持ち二人としては写真にしたくて来ている。
ヒメオオクワガタを撮るなら最低でも定番の樹皮かじりは抑えたいが、少し高い位置についていると望遠でも厳しい。
それで、大きな個体はあくまで淡々とサイズチェックするが、低い場所についているものは小さな個体でも喜び囲んで撮影 という奇妙なヒメオオ探しになる。
画像では明るく撮っているが、実際には逆光に葉陰で真っ黒。
ただ普段通りのヒメオオを撮るのに、雨の日だと濡れる以外にも苦労する (まず常識人は雨の日に山へ出かけない)。
ヤナギかじるヒメオオ、タラノキかじるセンノカミキリなどをポツポツと確認し、降り方も 「 大雨 」 という感じになってきたので引き返す途中。
突然 「 いた!」 と声を上げて、ishiさんがブレーキを掛けた。
ishiさんの事だから、ただヒメオオがいてもこれほどの反応はないはずだが。
「 あれ、見て下さい。」
と促されて窓の外に目をやると、草の茎に虫影が。
ヒメオオクワガタの雌雄が、イタドリの茎についていた。
話にだけは聞いた事があったが、実際にヒメオオが草をかじっているのを見るのは初めて。
有名なのは 【北海道でイタドリに集まっていた】 という話なのだが、そもそもあれを 「くわがた狂の大馬鹿者達」 で報告したのが、誰あろう ishiさんなのだった。
凄腕の 林原さん と見た時は一箇所に10頭以上もいたと言うし、北海道ではその後も同様のイタドリ食いが見られているようなので、たまたま間違って草をかじっていた というわけではないようだ。
なにしろイタドリは草なので齧ればすぐに倒れてしまい、次に行ってもどこだったかわからなくなってしまっているかもしれないが、ヒメオオが草につく 「 雰囲気 」 というものは目に焼き付いた。
ishiさんにしても、一度北海道で同じ状況を見ていた事が、この発見の助けになったのかもしれないと言う。
人の目に付いていないと言うだけで、ヒメオオにしてみればわりあい普通の行動という可能性もある。
ヤナギ以外の樹種はもちろん、これからは草本も注意して見ておきたい。
珍しいイタドリかじりを見られただけでも、来た甲斐があった。
そう言い合って、台風を押して山に出掛ける非常識には知らぬ振りを通し、雨水の流れで削られだした暗い山道を戻った。
2013年 9月15日 宮城県。