マクガイヤーチャンネル マクガイヤーゼミ第50回 「俺たちも昆活しようぜ!」

 敬愛する知の冒険野郎 Dr.マクガイヤーの持ち場をお借りし、楽しくお話しさせて頂きました。


 
 
 インセクターの称号は収録開始3分前に拝領。
 手加減考えずに喋れる場所をもらい、近年になく幸せでした。
 後半の80分は下記リンクから。
 
 
 一緒に東大の昆虫展を見た時の様子も、ドクターが書いてくれています。
 こちらの記事内にも同じ前半分のリンクがありますが、こちらはオリジナルなのでYOUTUBE版で非表示のコメントが流れます。

恐怖速報

 
 ここのところ生き物の調査つづきで岩手に青森に秋田に新潟と海山を飛び歩き、インターネット環境そのものが無い所にいると更新もままならない。
 
 
 そうしていると、昨晩。
 
 福島のある人から電話で
 「 わかっているでしょうね 」
 と問われる。
 
 わからんね、と言って逃れると
 「 早く書きなさい 」 
 と物凄い勢いで迫られる。
 
 いやいや、山の中にテレビと電話はまずまずあるがネット環境がない、車もそれほど…
 「 じゃあ仙台に帰ってきている今なら書けるでしょう、書きなさい 」
 と、その人はあくまでも迫る。
 
 自分の虫採りなどろくにしていないので書く事そのものがあまり無いのだが、ここで少しでも書かないとまた怖いことになりそう。
 まず福島から強制的に届く便りが怖いのである。
 以下はその一部。
 
 
 
 
 
 
 
 その人は普段から携帯電話に怖ろしいEメール 『 大型速報 』 を届ける事によって私を煽情しまくってくれており、7月半ばまでの福島でこの凄まじい記録。
 相手も怖いし自分も正気を保つ自信がなく、以降はメールを開かないようにと思ったが、やはり気になって直接電話する時につい聞いてしまうと、
 
 などと相変わらず悪い夢みたいな事を毎度毎度言うので 御冗談でしょうなどと返していたが、先に書いたように久し振りに繋いだインターネットから彼の書いたものを読んだらとんでもない記事が目白押しになっていた。
 仙台の私が書こうが書くまいが、同じ東北の福島からあなたが大成果を報せてくれているんだから読む人にしてみれば同じ事でしょう、と食い下がってみたが
 「 それじゃあボクの張り合いがないんですよ! 」
 と電話の向こうから強烈な殺気を含んだ咆哮。
 
              福島の某氏
 この調子では恐怖のカシオペア速報が週報から日報になり、センチメンタルサマーの内角ギリを抉り込む熱い暑い採集記に蒸し殺されてしまうのも時間の問題だ。
 
 それでいま、こうして泣きながら書いているが、よく考えると今季ここまでにその人から届いた恐怖新聞を振り返っただけで、私は何も書いていないのである。
 それではまた来年、御機嫌よう。
 
 
 
         2014年8月 軽井沢にて   野生のクリームソーダを飲みながら
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                            福島のカシオペア
                            カシオペア
 じゃあちょっと虫の写真でも貼っておくので、カシオペアさん今日はこれで勘弁してください。
 
 
 
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 薄暗い林でマルバダケブキの花を巡回するカラスアゲハ。
 ストロボで止めているので、暗い中に木漏れ日の当たった部分の背景が少し透けている。
 
 
 
 
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 ナナホシ、には若干星余りのテントウムシ
 大河川下流では割と見掛ける種類 と先日調査で一緒になった先生に教わってから、前よりも数多く目につくようになった。
 
 
 
 
 
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 先生の後ろについて、津波被害の復旧工事が進む浜を進むとカワラハンミョウが湧いていた。
 携行する飲料も3ℓ欲しいような猛暑日だったが、夕方いくらか涼しくなるとこうして低く伏せた姿勢を取る事も。
 
 
 
 
 
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 7月26日に宮城県で採集したノコギリクワガタ
 ついているヤナギの木を見上げた時点で大きいのはわかったが、低い位置に群がるカブトムシから離れ、幹の高い場所にいたので降ろすのに苦労した。
 
 左顎折れ、右は無事かと思いきややはり欠けていて、元はもう少し良いサイズだっただろうだけにやや残念。
 まあ今季は福島で特大が2頭出ているし、いずれにしても騒げるほどのものではない。
 
 
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 それぞれ掘り下げる話があるし、他にもたくさん見て来たものはある。
 あるが、また今度、現代社会に寄る時に。
 書けと言ってもらえるなんてありがたいなあ というお話。

夏のマイマイカブリ

 
 
 訪問・閲覧の履歴から見ると、ここのところ急にマイマイカブリの特定の個体群が興味を集めているようだ。
 このあたり、近しい方には藤次郎さんが当方の過去記事などから当該個体群の素性をお伝えしてくれているはずなので、こちらでは何か別に小記事でも とストックを漁ると、いくらか未掲載の画像が見付かった。
 

 
 
 
 
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 ヤナギの樹液に来ていた個体。
 
 私がクワガタムシを探して歩く事が多いからか、肉食性が強い虫の割に、食事シーンと言うと樹液を吸っているところばかり見かけるような気がする。
 カブトムシやクワガタなどよりもはるかに敏感で、接近時に少しでも振動を感じさせてしまうと、あっという間に根元へダイブし消えてしまう。
 体型が細いので、積もった落ち葉の隙間などに潜り込むのは得手なのかもしれない。
 夏に見ると、長く活動し煤けた個体も多いようだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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 こちらはひささんが夏に山形で点けたライトに来たもの。
 ライトに集まった虫を食べに来た とした方が良いか。
 
 ガの胸部からちぎれた羽根をくわえて走り回る。
 冬に寝ている姿からは想像し難いかもしれないが、飛べないこの虫の生命線は脚なのである(切り札はニオイ)。
 
 
 
 
 
 
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 これも食事中。
 オカモノアラガイか何か、陸貝を捕らえて食べていた。
 
 ここは最近見つけた場所で、当初はクワガタのアベレージサイズが大きいのと、それを独占観察できる事に喜んだが、そのうちマイマイカブリも樹上でやたらよく見掛ける事に気が付いた。
 他のポイントと環境もそう違わない林のように思えるが、雨の日にカタツムリの数でも比べてみたら面白いかもしれない。
 
 
  越冬個体の採集が主流なので、本当に冬に活動しているかのような錯覚すら覚えてしまう虫だけれど、こうして走り、食べている所を見ると、これが本来の活動期の姿なんだよな と妙に感心してしまう。
 
 
 
 
 

アオカナブン他 地元の色型

 
 
 以前 「 赤いアオカナブン 」 の話をした時に、写真か何かで見たいと言われていたのを思い出したので、前の画像を再掲。
 
 
 
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 右の通常色 → 左の赤色型。
 黄色がかったような個体はたまに見るが、真っ赤っかになるものは少ないと思う。
 
 画像の赤色個体は2007年に74mmのミヤマクワガタと同じ場所で採れたもので、ヤナギの樹液に斜めに頭を突っ込んでいた。
 
 見つけた瞬間は 「どうしてヤナギの幹にツバキのつぼみがついているんだろう?」  と混乱した事を覚えている。
 
 
 
 
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 一個体にグラデーションが現れる事もある。
 
 これは2009年に見た個体。
 当時、落としても落としても15分ほどでカナブンやハナムグリの類が殺到し幹が埋まるという怖いヤナギがあって、無数のアオカナブンの中から目に付き拾い上げたもの。
 
 自分しか知らないうちに、ポイントごとこの木が消滅してしまったのが残念。
 
 
 
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 これも前に載せたオオムラサキで、向かいにいるカナブンが赤い。
 
 オオムラサキが逃げないようにとばかり気遣っていたのと暗いのとで、撮った時にはカナブンの色は見ていなかった。
 2009年くらい、ここらでは赤いカナブンはそこそこの数が見られたのだが、最近は普通の色ばかり見掛ける。
 年によって出現頻度がそう変わるとも思えないけれど…。
 
 
 
 
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 2011年、マイマイカブリとカブトムシのペアが来ている木に、緑色の甲虫も一緒についていた。
 
 いかにも アオカナブンでござい という顔をして樹液を吸っていたが、どう見ても色味が違う。
 よくよく見ると、これはアオカナブンではなく緑色型のカナブンだった。
 
 
 
 
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 左がそのカナブン、右は同じ場所にいたアオカナブン
 
 色だけ見ても、並ぶとずいぶん違う。
 
 
 
 
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 裏側。
 右がカナブン緑色型。
 
 腹面でも橙色の見えるアオカナブンに対し、カナブンの緑色型では青味がかっている。
 仙台あたりで自分が見たカナブンの色変わりに限ると、同程度の緑色型が数頭と他は赤色ばかりというところ。
 他県で見られるような青や紫の個体もいつか地元で見られるだろうと毎夏地道にカナブン攫いしている。
 いつか が いつになるやら。
 
 
 
                                画像は全て宮城県産の個体

ニホンホホビロコメツキモドキ 宮城県

 
 これは9月22日の集まりで持っていた箱のうち、小さな虫が入っていたもの。
 展足の終わったミヤマダイコクやヨコヤマヒゲナガあたりを藤次郎さんの新箱に移し変え、空いた隙間をカナブンなどで埋めてある。
 
 
 当日は、遠くから駆けつけて下さったトモックさんが 「 お、標本だ。」 と言いながら箱を手にとって眺めていた。
 
 
 
 
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 ややあってから
 「 なんで、こんな虫が入っているの? 」
 とトモックさんが声をあげた。
 
 どれの事かと尋ねると、左下4番目の細長い虫。
 
 
 
 
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 寄って見るとこんな姿。
 ニホンホホビロコメツキモドキのメス。
 
 標本にする時、どうも頭が傾いているようで気になっていたのだけど、別に首が曲がっている訳ではなかった。
 
 
 
 
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 トモックさんが 「 メスの顔が左右非対称でね… 」 と教えてくれた通りで、そもそも頭部のセンターがズレているのだった。
 
 左のアゴが大きくて頬が膨らんでおり、これが 「 ホホビロ 」 の名の由来。
 虫も虫歯になるのか という顔。
 
 
 
 
 
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 こちらも同じ仲間の虫で、ルイスコメツキモドキ。
 
 遠くから見て、ピカピカのコメツキムシだと喜んで近寄ってみると、触角がコメツキとは違っていた。
 先にこれを見ていたので、少し後にニホンホホビロを見た時にも注意が向いたのだろう。
 
 
 
 
 
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 発見時の画像。
 はしゃいだデザインだが、同じコメツキモドキの類だという事はわかる。
 
 この時は顔が左右非対称の虫だとは思わず撮ったが、たまたま残した1カットが膨らんだ左頬側だった。
 片側いずれか という事ではなく、メスは必ず頭部の左側が発達しており、メダケなどに穿孔して産卵する際にこの構造が役立つのだと言う。
 
 
 私が近所で適当に採った虫を入れた箱に、西日本に多いこの虫が混じっていたのがトモックさんには意外だったとの事。
 これ以降は一頭も見ていないが、北は岩手まで記録があるようなので続けて注意したい。
 近くのタケやササに、独特の産卵痕でも見付かると面白いのだけど。
 
 
 
 
 2013年 ルイスコメツキモドキは    2013年 6月5日
        ニホンホホビロコメツキモドキは 同 6月20日 いずれも宮城県

蓼食うクワガタ

 
 
 クルミ若木をかじる複数のヒメオオクワガタを見付けた後、幾頭かをヤナギで確認しながら先日ペアの吸汁を確認したイタドリの群落へ。
 
 
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 「 やっぱりいました。」
 と ishiさんが最初に見付けたのがこの♂。
 
 はじめ目に付いた中では最も大きく、大きなイタドリをなかば切断して傾がせていた。
 中空の茎に開けた穴へ頭を突っ込んでいる。
 
 
 
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 周囲に目を走らせると、他の個体も目に入ってくる。
 
 このオスはイタドリ自体ではなく、その茎に巻いた他の植物の蔓を傷付けて吸汁していた。
 蔓の分岐の上下ともバサバサにほぐされていたので、同じ場所をしばらく齧っていたのだろう。
 
 
 
 
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 メスも見付かった。
 これも蔓の方についている。
 先日ishiさんが見付けたペアのメスより小さく、違う個体のようだ。
 
 ごく小さな傷を付けてペロペロなめているが、この画像では単にしがみついているだけにも見えてしまう。
 もう少しわかりやすく齧ってくれると嬉しいのだけれど。
 
 
 
 
 
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 少し待っていると、前に付けた茎の傷が乾いたのか、頭を立てて少し左側を齧り始めた。
 これなら文句無い。
 
 「 うーん、草についてるね本当に… 」
 と藤次郎さん。
 つい先に見た時には、私も同じような反応をとるしかなかったのだ。
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 いやあ良いもの見ましたなあ と引き上げムードになりかけた所、奥に見える一本のイタドリがどうしても気になった。
 藪から突き出た先端の葉くらいしか見えていないのだが、周りの株と較べて妙にくたびれているように思える。
 
 
 
 
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(ishiさん撮影)
 
 
 
 藪を分けて気になるイタドリに近寄り、根元近くを覗いて見るとここにも太ったヒメオオが見付かった。
 
 下向きにとまり、やはり茎に穴を開けて吸汁している。
 もうちょっと寄ってから撮ろう と欲を出し、調子に乗って手前の葉をどけたりしていたら案の定落下したので回収。
 それで ishiさんの画像をお借りした。
 
 
 
 近くにはヤナギの若い木もあるにはあるのだが、なぜかこの周囲の個体はどれも草にばかりついている。
 「 まさに 【蓼食う虫】 ですね。」
 とは ishiさんのお言葉。
 
 クワガタが蓼食う虫になる条件が知りたい。
 
 
 
                             2013年 9月23日  宮城県

ヒメオオすきずき

 
 先日はishiさんと二人、台風と正面からやりあうという暴挙に。
 霧と風雨をなんのと押し返して見付けたのが、イタドリから吸汁するヒメオオクワガタのペアだった。
 
 その後に同ルートを辿った藤次郎さんは
 「 ヒメオオ少なかったし、道酷くて心細かったし…」
 などと 乙女的な弱音を漏らしたりもしていたが、これは二人と一人で単純に目の数が違っただけの事。
 
 だったら目の数を足せば良いのだ! という小学生的な発想により、三人で一緒にまた同じ場所を見に行ってみた。
 
 
 ポイント到着後、前回ヒメオオがついていた木を中心に見て回ったが、あるのは齧り跡だけ。
 一頭目を見付けるまで妙に苦労する日があるな というような事を考えながら進む。
 
 
 
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 ところが、この日は妙に目が冴えた。
 最初から冴えていた というのではなく、突然に冴えた。
 
 説明が難しいのだけれど、遠くの虫ほどよく見える。
 
 
 
 
 
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 いない所にはいない。
 いる所は事前に正体不明の確信を伴い、よく見れば確かに虫がそこにいる という感じ。
 
 それでやたら遠くからヒメオオが目に付いた。
 
 
 
 
 
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 一枚目の画像からずーっと寄って、ついている木の根元から見るとペアだった。
 
 その場をお二人にお任せし、道までちょっと戻って眺めるとさらに遠くに他の個体が見える。
 裸眼で0.03とは思えないような視力は我ながら不気味で、藤次郎さんからは
 「 目、なんかしたの?」
 と フワッとした感じでこわごわ尋ねられるが、どうにも説明に困る。
 
 
 
 
 
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 同じ道をもう少し進んだ先のカーブ。
 左手から突き出した低い木に黒いものが見え、おっ と思うのとほぼ同時にishiさんも声をあげてブレーキを踏む。
 
 サワグルミかオニグルミか、クルミの類の若い木にヒメオオクワガタのペアが派手な傷を付けて吸汁していた。
 この木にはもう一頭ついており、似た高さで同種の隣の木にも同じような齧り跡がついていたので、周囲のクルミの木に一定期間ヒメオオが集まっていた事は確かだろう。
 
 画像の齧り跡は螺旋状につながって幹を数周している。
 
 
 
 本来は先日見た草につくヒメオオを藤次郎さんに見てもらう事が狙いだったのだが、それより先にヤナギ以外についているものが続々目に付いてしまう。
 
 三人で首を傾げながら、この日の本命イタドリの群落へ向かった。
 
 
 
 
                              2013年 9月23日  宮城県